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第123話
「・・・陽向・・・」
「プロポーズの返事が無い・・・僕は振られちゃうの?」
「くっ・・・不意打ちだ。いつも大事なところは陽向に持っていかれる・・・」
「ふふっ。お返事がありませーん。僕、振られちゃうのかな?」
「・・・さっきまで・・・陽向が俺をここに連れてきたのは、別れ話をする為かも知れないって・・・」
「ふふ、征治さん、そんなペシミストな一面もあったんだね。
僕は征治さんみたいなキラキラビームは出せないけど、征治さん好き好きビームは出してたつもりなんだけどな。ペシミストシールドは強力でビームが遮断されちゃってたのかな」
征治さんの頬にチュッと大げさな音を立ててキスをする。
「よし、これでシールド解除。これでよく届くはず」
征治さんの耳元に唇を寄せる。
「征治さん、愛してる。征治さん無しでは生きていけないよ」
征治さんの腕がぎゅうと締まって、苦しいほど強く抱き締められた。
「陽向・・・あー、本当は俺がプロポーズしたかった・・・。いや、今からする。
陽向、愛してるよ。もうとっくに陽向は俺の特別で唯一の人だ。俺も陽向の全部が、愛しすぎて苦しい。だから一生離してあげられないよ、きっと。それでも俺と一緒になってくれる?」
征治さんが僕の手を取って指先に唇を添える。
「うん。一生、離さないで」
征治さんが僕の髪に鼻を埋めて吐息を漏らした。
「陽向・・・陽向・・・ねえ、キスしてもいい?外だけど・・・」
「ふふ、雨のお陰で誰もいないよ。でも見られたっていい。
征治さん、キスして」
互いの体に絡み合わせていた腕をほどき、至近距離で見つめ合う。
征治さんの目は溢れんばかりの愛情を湛えていて、僕はうっとりそれを見つめ返す。
ああ、僕はこの人がどうしようもなく好きだ。
そんな人に愛していると言ってもらえる僕はなんて幸せ者なんだろう。
征治さんの右手がすっと伸びてきて、僕の頬の輪郭を優しくなぞる。
「陽向、愛してる」
ゆっくり近づいてくる唇に塞がれる前に「僕も、愛してる」と答え、温かく柔らかいそれを迎え入れた。
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