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第126話
それを機に、再び征治さんにスイッチが入ったのが分かった。
僕は僕で、弱点である首筋を噛まれ、その跡を熱い舌でなぞられ、Tシャツの裾から入り込んできた大きな手が肌を這いだすと、さっきの火種が、風を送られ赤く光る炭火のように一気に勢いを取り戻し、パチパチと火の粉を飛ばすように上がった熱が全身に伝わっていく。
離れている間、何度、自分に触れるこの手をこの唇を、そして自分を貫く熱い楔を思い出して体を疼かせたことか。
急激に飢えを覚えた。
僕の喉を食みながら、Tシャツをたくし上げ、僕の体の輪郭を確認するようにまさぐる手に煽られ、僕も征治さんに手を伸ばすが、纏っているものが邪魔で直接触れられない。
じれったくて、征治さんの体をグイと押しやり、起き上がった。
訝し気な目をする征治さんの前で、手早く身に着けているものを脱ぎ落とし、生れたまんまの姿になる。
ゴクリと喉を鳴らした征治さんも、同じように全てを脱ぎ捨てた。
一回り痩せ、筋肉がより浮き彫りになった体に、既に臨戦態勢でそり勃つ剛直を目にして、体の奥が疼く。
腕を取られベッドに押し倒されるやいなや、噛みつくようなキスをお見舞いされた。
「んんっ」
征治さんの息が既に荒くなっているのが、こちらの興奮も呼ぶ。手を背中に回し、少しでも多く体が触れ合うように征治さんを引き寄せる。
「ああっ」
征治さんの指が胸の印をぎゅっと摘まみ上げた。そして絶妙な力加減で指で挟んだそれをくにくにと捏ね始める。
「んああ、あっ、あっ・・・」
腹の奥にじわじわと熱が溜まっていく。
ぷくりと立ち上がった粒を今度は指の腹で押しつぶすように捏ねられ、快感に腰が勝手に揺れ始めた。
征治さんの舌が耳や首筋を這い、指先では胸の尖りを弄び、その上、僕の腰の揺れに合わせて下半身も器用に蠢かせるのでピタリと合わさったふたりの体の間で二本の屹立が擦り合わされる。
同時に与えられるいくつもの快感に、早くも心拍数は上がり、息も乱れ、僕のものが大量の蜜を零している。
「んふ、ああ・・・ああ・・・待って・・・そんなに・・・
すぐに・・・いっちゃう」
「まだ、始まったばかりだよ」
耳のすぐ傍で、征治さんが低い声で色っぽく囁く。
ああ、この声だけでも感じてしまう。
「だって・・・あ、あっ・・・ずっと我慢してたから・・・」
「ねえ・・・まさかとは思うけど・・・誰も触れてないよね?この体に」
「そんなこと、あるわけないじゃん」
むっとして睨むと、
「だって、沖縄だろ?海パンだったら上半身裸じゃないか。みんな見放題だし、肩組むふりしてこの肌に触ったり・・・」
え?そういうレベルで?
「何言ってるんだろう、この狼さんは。紫外線が強すぎるから、みんなラッシュガード着てるし、僕は一度も海に入ってない」
「・・・よかった」
本当に安心したようにそう言うと、今度は胸の尖りを舌で捏ね始める。
「あ・・・ん・・・」
一度、ウミカジの食堂で給仕しているとき、男性に「兄さん、いい尻だな」と意味ありげに撫でられたことと、東京から来ていた大学生のグループの女の子二人にしつこく連絡先を聞かれたことは、黙っておいた方が賢明かな。
だが、ちゅばちゅばと胸を吸われ、時折歯を立てられ身をのけ反らせるうち、そんな思考はどこかに消えうせ、いや、何も考えてなんていられなくなった。
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