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第130話

「許すも何も・・・陽向がただ一生懸命なだけだったのは分かってるし、問題に真摯に向き合って頑張ってる陽向も俺は好きなんだ。ただ、俺が自分に自信が無くて弱かっただけ。 でも、もう・・・今はこうして陽向が腕の中に居てくれるから・・・」 きゅっと僕の体を抱き返してくれる。 「ねえ、もう分かったでしょ?俺の最大の弱点」 それって・・・僕っていうこと? 確かにとても大事にされ愛されているとは思っていたけど、いつも揺るぎない征治さんのバランスを崩してしまうほど、僕が征治さんの中で割合を占めているとは理解していなかった。 僕の中心には征治さんがいる。 だから僕にとっても最大の弱点は征治さんだ。だけど・・・ 「弱点だらけの僕の最大の弱みはやっぱり征治さんだよ。でも、同時に最大の強みでもあるんだ」 はっとしたように征治さんが僕の顔を覗き込み、破顔した。 「陽向は凄いな。そっか。そうだね。 俺は陽向が居れば他は何にも要らないってこの数か月ずっと思ってたけど、陽向が居れば無敵なんだって考えた方がいいね」 「無敵!あはは、それいいね。スーパーダーリンがとうとうスーパーヒーローになった!」 自分で言った言葉がツボにはまって、笑いが止まらなくなる。 「ふふふっ、でも僕はスーパーヒーローにこんなことしちゃうんだ」 目の前の鎖骨の辺りをちゅううと吸ってみる。 あれ?うまくつかないや。もっと強くかな? 何度かちゅうちゅう吸い付いて、やっと生まれて初めてのキスマークを付け満足したところで、抱き合ったままゴロンと体を返された。 上になった征治さんが、ニヤリと笑う。 「いたずら牡鹿君、そろそろ痩せ狼はメインディッシュを頂いてもいいかな?」 征治さんは悪戯っぽく笑っているけど、瞳の奥にチラチラと欲望の炎が見え隠れしていて、なんだかドキドキする。 いいよ、食べて。 頭の先から足の先まで、征治さんのものだよ。 手を伸ばして征治さんの頬に触れると、パクっと人差し指を咥えられた。 「ふふ、そんなにお腹が空いてるの?」 指先だけだったのが、ぐっと根元まで口の中に引き入れられる。 熱くて、柔らかくて、滑っていて・・・熱い舌がにゅるりと絡みついてくると、指を舐められてるだけなのにもうセックスをしているみたい。指の股を舌が這うと、ゾクゾクと体内にさざめきが起こる。 「はぁ・・・ん・・・征治さん・・・キスして・・・」 艶っぽい笑みを浮かべた征治さんが、ちゅぽんという音を立てて、自分の口から僕の指を引き抜いた。 「おねだりされるのって、いいな」 そう言って唇を寄せてきた征治さんだけど、僕の唇を舌でチロチロと舐めるだけ。早く、キスして欲しいのに。それもとびきり濃厚なやつ。 あ、もしかして焦らして僕のおねだりを待ってる? 視線で早く欲しいと訴えても、ニマニマしてるばっかりで。そうやって待たれると恥ずかしくて言えないのに。恨みがましく見上げると、征治さんの目尻が下がった。 「ふふ、可愛いな・・・陽向、キスして欲しかったら舌出して?」 これは譲歩してくれたつもり? 恥ずかしくて顔に熱が集まっているのを感じながら、おずおずと舌を出す。 「あー、可愛い。じゃあ、いただきます」 かぷっと食いついた征治さんは、僕の舌を自分の口に引き入れて弄んでいたが、次第に熱を帯びだした征治さんの舌がぐっと僕の口内奥深くに侵入してきて、容赦なくかき回し始めた。

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