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第140話

陽向もサポートをした田中さんのルポタージュが完成し、社会派の雑誌に掲載された。 一区切りがつき、世話になり力を貸してくれた人たちにお礼がしたいと、家へ招いてちょっとしたホームパーティーを開くことにしたのだ。 花村さん以外、俺は初対面の人ばかりだったが、すぐに場は打ち解けたものになった。 仕事の時に感心していた花村さんの高いコミュニケーションスキルはここでもいかんなく発揮され、軽妙なトークであっという間に場を明るく楽しいパーティーへと盛り立てた。 ここにいる大人たちは皆、陽向の事情を知っている。その上で何の偏見も隔たりも無く接してくれている様子に安心するとともに、感謝もした。 「花村さんたち、気を遣わないでって言ったのに・・・差し入れありがとうござ・・・わわ!どんだけお酒持ってきてるんですか」 「あ、この人自分で飲む気満々だから、気を遣わないで」 花村さんが八神さんの背中をポンポン叩けば、 「龍ちゃん、ザルだからねえ。だけど龍ちゃん、正解よ。ここにもう一人ザルがいるから」 と、翠さんが田中さんの背中をバンバン叩く。 洒落たケーキを差し入れてくれた翠さんは、モデルと言っても納得するような背の高いスレンダーな美女で、瞳の色は違うが花村さんとそっくりの顔をしている。 八神さんと翠さんは、パートナーの姉という関係だけでなく、高校卒業まで毎日一緒に登下校した同じ歳の親友らしく、互いに遠慮のない会話にそれがよく見て取れる。 旦那さんが出張中ということで一緒に連れてこられたくるみちゃんは、一見、まるっきり外国人に見える母親の血を色濃く受け継ぎ、まさに胡桃色の大きな瞳に同じ色の緩いくせ毛で、天使のキャラクターなんかでテレビに出てくる子役モデルのような可愛らしさだ。 昨日からニ人がかりで用意した料理の数々を皆が褒めてくれ、嬉しそうに少しはしゃいでいる陽向。その左手の薬指には俺と揃いのリングが光っている。 最初、強面の職人風で重さんを思い起こさせた田中さんも、酒が入るにつれリラックスモードになったようだ。 和気あいあいと楽しい時間が過ぎてゆく。

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