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第2話
「大介、その格好……でいくのか。昭和のサラリーマンみたいだが」
叔父の家で1週間ほど過ごした後、新しいブレザーの制服を着て髪をととのえていると、驚いたような声にぶつかる。
祖父に高校入学したらこのように髪を整えろと教わったのだが、間違いがあっただろうか。
首を傾げると、でもまあ兄貴にそっくりだなと呟き懐かしそうに俺を見る。
叔父の家は都内にある立派な邸宅だが、若い奥さんとまだ3つくらいの従兄弟がいるので、どうも落ち着かなった。
全寮制の高校というくらいで逆にありがたいことだと思う。
「眼鏡も度があるからか、フレームが太いな。しかし、それにしても古いフレームだな。もっとカッコイイのが欲しいだろ?」
叔父は俺の格好が気になるようで、手を伸ばして眼鏡を奪う。
「別に。これでいいよ。おじいちゃんが、牛を売って……隣の市まで行って買ってくれたんだ」
そう告げると、はっとしたような表情を浮かべて叔父は俺の眼鏡を返してくれた。
大事にしていた牛のジロウを売って買ってくれ
大事な眼鏡だし、これがないと歩くこともままならない。
「つかぬことを聞くが、大介、学校で何て呼ばれていたんだ」
「……ダイスケとか、委員長とか……あとは、タナカパパって呼ぶやつもいたよ。身体が大きいからかな」
叔父に答えると、それだけじゃないかもしれないけどなと言いながら、おもむろにバックに詰めた私服などを広げはじめる。
せっかく詰めたのになんてことをするんだ。
思わず嫌な顔をすると、叔父は肩を落として
「私服は、いつもどこで買っていたんだ」
「……おじいちゃんが、かご屋のハルさんに取り寄せてもらってたよ。俺のサイズはハルさんのとこにないから」
「……まあ、あの村には店がないからな。金は渡しておくから、好きな服を買いなさい」
「よく分からないけど、大丈夫。これで困らない」
気候も寒くはないし、もっている服で充分である。
叔父の言っていることがわからずに、バックに服を詰めなおす。
「……何かあったら相談するんだぞ」
酷く心配そうな顔つきをする叔父に、俺は心配ないよと返して、車で送るという叔父の言葉に頷いた。
何本も線のある電車で、目的地に辿り着ける自信がなかった。
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