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第4話

「〇凸農業高校から転校してきた、田中大介です。趣味は、米の脱穀と牛のエサのブレンド……、内地に来たのは初めてなんで、色々教えてください」 自己紹介をするが、クラスメイトは手にしているタブレットを弄っていてこちらを見向きもしない。 タブレットは、たまに学校の機材で貸出ししていたので触ったことはあるが、ここでは1人1台で授業をすると先ほど担任に手渡された。 「田中君は北海道から来たばかりで慣れないことも多いだろうから助けてあげてくれ。じゃあ、そこの3列目の1番後ろに座ってくれ」 担任に指示された場所に行き、俺はタブレットと教科書を開く。 黒板に書いた文字がタブレットに表示されると言っていた。ノートは使わないらしい。 隣に座っている生徒が珍しそうにこちらを見ている。 身長は俺と変わらないくらいで、180センチはあるだろう。 何かスポーツをやっているようなしっかりとした体つきで、浅黒い肌で健康そうな印象である。 「なーなー、お前のその格好さ。なんかのお忍び?」 「おしのび、とは?」 「スゲー有名人とかで正体隠すとかよくあるっしょ。じゃないとギャグだよな。マジで笑える」 こそこそと声をかけてくるが、意味が分からず俺は首を傾げる。 「なにも隠してないのだが……。授業なので集中しよう。俺は普通科の授業は何もしてないから、遅れている」 俺がそう答えると、またまたーと彼はぷっと吹き出す。何も笑うようなことは言っていないが彼の笑いのツボは違うのかもしれない。 「あー、オレは駒ケ谷勇大、よろしく」 「駒ケ谷君か、よろしく」 「勇大でいいぜ。オレも大介っで呼ぶし、あとで秘密を教えてよ」 秘密などはないのだが、雄大はもう俺をおしのびだと決めつけたようだった。 そんなことよりも、普通科の科目の遅れを取り戻さなくてはなあ。 大学で農業科に進むとしても、授業に遅れてしまうのはイヤだった。 「で、大介は変装するほど有名人なのか」 昼休みに駒ケ谷に学食に連れていってもらうと、先ほどの続きが始まる。 「いや、変装でもない。北海道でもこのままだったし」 「マジで素なのか?そのメガネのセンスもヤバいし。なんか、白黒写真の日本の科学者みたいな感じ」 「眼鏡は祖父が大事な牛を売って買ってくれた」 自慢の眼鏡だ。黒縁だがフレームに鼈甲を使っているから長持ちすると祖父は言っていた。 「そ、そうなんだ。でも、ここの学園……かなり金がかかるよ」 「祖父が先月亡くなったんで……この学校の理事長の叔父が引き取ってくれてな。それで、理事長だし、社員割りとかで入れたのだと思う」 「社員割りって……。大介、面白すぎだろ。え、理事長って、タナカコンツェルンの……。そりゃ、金持ちだよなあ」 目の前のウインナーを頬張りながら、駒ケ谷は目を白黒させて俺の話を聞いてくれる。 「叔父の仕事はよくわからないが、そういうわけで、有名人じゃない」 そこはハッキリさせておこうと告げると、駒ケ谷はおかしそうに笑ってよく分かったよと告げた。

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