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第6話
制服をハンガーにかけて備え付けのクローゼットにしまう。ベッドはスプリングのマットがあって、至れり尽くせりのようだ。
私服に着替えるが、気候はもうさほど寒くないので、もってきた服だと暑く感じるし、少し汗をかいたかもしれない。
シャワー室があるなら使わせてもらうか。
バスタオルなどは備え付けがあると言っていたから、あまり持ち物がなくても困りようがない。
寝室から出ると、リビングの灯りがついている。さっきは通過しただけだったので、灯りはつけなかったから、ルームメイトが帰ってきたのかもしれない。
挨拶しようか。
ルームメイトの方の寝室をノックしようとして、猫の鳴き声が聞こえて思わず手を止めた。
もしかしたら捨て猫を拾ってきているのか。
にゃーにゃあと可愛らしい声が聞こえる。
駒ケ谷は良くない輩だと言っていたが、本当は心優しい動物好きかもしれない。
動物好きには悪いやつはいないからな。
ミルクでも用意して置いてやろうか。
寮の中にある購買をさっき来るまでにちらっと駒ケ谷が教えてくれたので、そこに買いにいくことにして、俺は部屋を出た。
目当ての商品を買うまでに、何人かの生徒に出会ったが、俺の姿に驚いていたようだった。
普段着なので、家で過ごすのと変わらない中学時代のジャージで出たのは良くなかったかもしれない。
そのへんのことは駒ケ谷に教えてもらおう。
備え付けの使われていなそうなやかんを洗うと、ミルクを入れてかたい元栓を開いて火をかける。
大体猫なら体温くらいでいいよな。
30秒くらいで火から下ろすと、平皿へとミルクを移す。
平皿を手にしてルームメイトの部屋をノックするが、まったく返事がない。
ぱたりと猫の鳴き声もやむ。
ネームプレートには仁川将と書いてある。
「すまない。転校してきた田中だが、ルームメイトの挨拶をしようと思ってな」
大声をあげると、バンッと扉が開いて小柄な生徒が駆け出してきて、避けきれずぶつかってしまう。
「ッた、あ……ッ」
バシャッとミルクが胸元に引っかかり、謝罪もなく去っていく男子の背中を見送った。
「あーあ、零れてしまったな……」
平皿を手にしたまま、俺は目をあげると怒りの形相をした裸の男が目の前に立っていた。
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