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第13話

「なあ、仁川殴ったのはまずいよ」 背後を歩きながら、駒ケ谷は俺を心配するような声をかけてくる。 殴ったが、それはかなり腹がたったからで俺は悪くはないだろう。 「そうだな暴力は良くなかったな。反省する」 ちゃんと話せば良かったが、ああいうタイプは痛い目をみないとわからないだろう。 それに、駒ケ谷と俺のまだ1日しかたっていないが友情を馬鹿にされたようにも感じたのだ。 「仁川って、父親が国会議員でさ。生徒会長の幼馴染で、仁川に楯突くと生徒会長が出てくるって話。理事長の親戚だし、大介は退学にならないとは思うけど」 暴力奮ったのは確実に問題になるよと、不安そうな表情を浮かべる。 駒ケ谷は心から俺を心配してくれているのだ。 熱い友情に涙が出そうだが、そんなことで退学になるのであれば、してくれて構わないと思う。 普通科の授業についていくのも骨が折れそうだし。 「生徒会長というくらいなのだから、人徳はあるだろう。きちんとありのままを話せばわかるはずだ」 食堂につくと駒ケ谷は席をとって、食事を運んで来てくれた。勝手がわからない分ありがたかったが、何故か至れり尽くせりなので、こそばゆい感覚になる。 先程の罪悪感からかもしれないな。 「仁川は、授業にこそこないけども、そういう意味でスクールカーストじゃ上の方なんだ」 「カースト?」 駒ケ谷の言葉が分からずに俺は首を傾げた。 「だから逆らう奴もいないし、出来ればコネクションをつけたいから、彼に身体を差し出す奴も多い。見た目もいいからね、誰でも抱けると思っているところがある。……だから、大介がアイツを殴ったのすごいスッキリしたんだ、ホントはね」 キリッとした眉を下げて、助けてあげたかったのにゴメンなと再度謝ってくる。 「謝ることはないし、気にするな。まあ、飯を食べようか」 並べられた料理は、中華料理のようでこっちに来てから何度か叔父につれていってもらったりした。 同じようなレベルで口に運ぶと凄く美味くてついつい口元が綻ぶ。 「ホントに身体、大丈夫なのか?」 「ああ、平気だ。丁寧にはしてくれたしな。精肉用の牛もオスだけで置いておくと、オスに盛るヤツがでてくるし、仕方がないだろう」 理性的に生きるのにもまだまだ難しい年頃だ。 「牛と一緒かよ……」 「動物はみな一緒だよ。……ハナコ元気かなあ」 「彼女?」 「ハナコは乳牛なんだ。毎朝、ハナコのおっぱいを揉みほぐして乳を出してやっていた」 俺の話に駒ケ谷はぶっと吹き出して、なんかやらしいなと呟いた。 やらしい話はこれっぽっちもしていなかったのだが。 「そうだ……大介、ちゃんと部屋は鍵をかけて寝ろよ」 「そこまで節操なしか?」 俺は首を傾げると、駒ケ谷はそうだと何度か頷いた。 「ないだろ……大介、ホントに気をつけてくれよ」

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