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第14話
部屋に帰ると、既に仁川は寝たのかリビングの明かりも消えていた。
暴力はまずかったな。
後できちんと話をして謝るとしようか。
俺は部屋に入り駒ケ谷に言われた通りにしっかり鍵を閉めて、流石に疲れたのでそのまま眠りについた。
毎日の日課の乳絞りや農作業をおこなう時間になると、ついつい目が覚めてしまう。
まだ4時半なので、誰も起きてはいない。
目が覚めて仕方がないので机に向かって勉強をしていると、気がつけば7時を回っていた。
食堂に行けば、朝食をオーダーできると駒ケ谷に聞いた。
制服のシャツをきて、ブレザーを手にしてリビングに出ると、既に仁川は起きていたのか朝食を食べていた。
「……ダイスケ。メシ、作ったから食ってけよ」
頬には湿布を貼っていてなんだか痛々しい。
悪くは無いとは思っていたが、罪悪感が芽生えてしまう。
「ああ、ありがとう。自炊するのか?」
「たまにな。食堂に行くのが面倒な時とか……」
制服を着ていないところを見ると、今日も授業には出ないつもりなのだろう。
「教室にはいかないのか」
いれたてのコーヒーと焼いたパンに目玉焼きとベーコン、コールスローが置いてありバランスがいい食事だ。
俺は折角なので、コーヒーを口に含んだ。
「別に勉強の為にココに入れられたわけじゃねえしな。素行が悪いからマスコミから避けてるだけだし」
勉強なんかしたくないしと続けた仁川が寂しそうで、なんだか胸のとこが苦しくなる。
「そうか。昨日は殴ってすまない」
俺は心から昨日の暴力を詫びる。やっていることはなんにせよ、寂しさを紛らわしているのだろう。
「俺を殴るとか、ホントに珍しいヤツだよ。ダイスケは、俺の親とか怖くねえの?ダイスケの親は何をしてるんだよ」
食べていたパンを飲み込んで、軽く一息つく。
「あんまり覚えてないな。両親は7歳の時、自家用のヘリが落ちて亡くなったから。それで、祖父に引き取られた。祖父は酪農家だったから、俺も牛を育ててたよ」
味付けも美味しかったので、全部食べ切るとごちそうさまと手を合わせる。
「祖父も亡くなったし、土地も全部売ってしまったから、俺は獣医にでもなろうかと考え始めた。勉強は自分の将来のためにだから、仁川も自分のことを考えた方がいい」
俺は席を立つと、食器を手にしてシンクへと片付ける。
「…………食洗機あるから、そこに置いておけよ。俺がやっとく」
仁川の言葉に、やり方も分からないので任せると告げて、洗面所に向かうと髪をととのえる。
そういえば、洗濯について教えて貰ってなかったなと思い、駒ケ谷に聞こうと考えながらいってきますと部屋を出た。
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