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第16話
授業が終わり放課後になって、駒ケ谷は部活に出るからと先に出てしまったので、俺は教室に残り予習を片付けていた。
部活くらいは入った方がいいかと思ったが、まだ何にするか考えてはいない。
廊下の方がざわつき煩いなと思いながら視線を向けると、雑誌などから出てきたような造作の整っている男が取り巻きのような生徒たちを連れて入ってきた。
教室には俺しか残っていないので訝しみながら顔をあげる。
「君が田中大介くんかな?」
穏やかで柔らかい声は落ち着きがあり好感を覚える。
「ああ、そうだが。何か用だろうか」
視線をあげて問いかえすと、綺麗な顔ににっこりと微笑まれて毒気を抜かれる。
周りの生徒は俺を見てざわつき、馬鹿にしたような表情をする。
「昨日、君は転校してきたんだよね。知らないだろうけれど、君のルームメイトの仁川将は僕の従兄弟でね。弟のように可愛がっているんだよ。君に綺麗な顔を殴られたと聞いて、当人の問題だと言われたのだけど心配になってね」
周りからなんて野蛮な奴なんだと煽るような誹謗が飛ぶ。
「ああ、本人には朝やり過ぎたと謝ったので解決していると思うが」
タブレットを閉じて、仁川もあんな様子だったし怒ってはいなかったようなのにと首を捻る。
仁川もこの男に言いつけて何かさせようなんて考えてはいないだろう。
「君のように野蛮な人が将のルームメイトでは心配なのでね、少し制裁を加えなくてはいけないと思うのだよ」
柔らかい口調だが、言っていることはきな臭い。
「タツキ!!勘違いだからッ、そいつに手は出さないでくれ」
息切れをさせながら教室に仁川が駆け込んでくる。
「勘違いか?将、こいつと男でも取り合って喧嘩になったんだろう?」
分かっているんだよとばかりにタツキと呼ばれた男は優しく仁川に問い返す。
「違う……俺が悪いんだ。俺がコイツを……レイプしたから、殴られて当然なんだ」
庇うように俺と男の間に入ってくる仁川は、本気で俺を守ろうとしてくれているようだ。
びっくりしたように男は俺の顔を凝視する。
「……この子をかい。随分と趣味が変わったんだな、将」
「変わってないけど……ッ、コイツは悪くないから。制裁なら俺が受けるから」
必死で言う仁川が、どうやら昨日までの彼とは少し違うのかもしれないと思いながらその肩を軽く押してどかした。
「別にレイプに怒って殴ったわけではないが、従兄弟どの、俺は野蛮ではないので、そう簡単には手はあげない。信じてはくれないだろうか」
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