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第17話

「……将、誰でもイイといっても、体格差くらいは考えた方がいい。そんなに顔を腫らして」 折角のいい顔が台無しだとか呟いて、俺を睨みつけてくる。まあ、弟のようなものなら仕方がないか。甘過ぎる兄貴というやつなのだろう。 こんなのでは、仁川もやりたい放題の我儘になってしまうのも無理はない。 「……従兄弟どの、俺なんかに構うより、本当に仁川のことを考えるならば、ちゃんと授業を受けるように説得する方がいいのではないか」 甘やかすだけがいいとは思えない。 寂しそうにしているのは、本当の友達とかがいないからだろう。 それは、この男の権力のせいのような気もする。 「生意気なのは好きじゃないよ。将が折角庇ってくれているのに……」 穏やかな口調だが嫌悪を孕んでいて、ぞっとして思わず立ちあがると、一斉に取り巻きたちが襲いかかってくる。 なんという集団だろう。 洗脳に近いような集団の動きに、俺は男たちの攻撃を避けるようにして動きをかわして、仁川の従兄弟の胸倉を掴みあげた。 動きを止めるならば司令塔に限る。 「……久我様」 「生徒会長……」 集団はおののいたように動きを止める。 「暴力は好きじゃないんだ、帰ってくれないか」 昨日はついついカッとなったが、暴力じゃなくて話し合いが一番だとは思っている。 久我は、俺をじっと見上げて眺めるとおもむろに眼鏡を取り上げる。 視界がぼやけてしまい、久我の表情は見えない。 「なるほどな……。僕に意見をするとは、身の程知らずと思ったが、面白い。少し可愛がってあげようか」 胸倉を掴んでいた腕に手をかけられ、次の瞬間ガッと背負い投げを食らわされていた。 「少し大人しくしてもらうよ」 床に投げられ虚をつかれた俺の下腹部あたりをグッと踏まれ、痛みに意識が遠くなる。 「タツキ……ダイスケを返してくれ」 「ちゃんと可愛くていい子になるようにしたら、将にも遊ばせてあげるからな」 頭の上で不穏な会話が聞こえたが、俺の意識はそのまま暗い闇の中へとのみこまれていった。

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