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※第19話

「少しくらい綺麗な顔をしているからと言って、調子に乗っていると痛い目をみるよ」 穏やかだった声にかなりの怒気がこもる。 眼鏡をかけていない自分の顔などぼんやりしか見たことはない。 もちろん、眼鏡をかければすっきりと見えるが、眼鏡を外してしまえば何も見えない。 実際どんな顔なのか、わからない。 俺の中で眼鏡をかけていない自分の素顔は不明なのである。 「自分の造作や人の美醜に興味はないが……お前の顔は確かに綺麗なんだろうな。雑誌とかに載っていそうだ」 素直な感想を言うと、久我は俺に顔をぐいと近づける。 「そんなこと今更言われなくても分かっている。上から目線で言うな、立場をわきまえなさい」 どことなく戸惑いを孕んだような口調に、生徒会長と言っても同じ年代なのだなと思う。 「……でも、心の美醜はそれとは違うと思う……お前こそ立場をわきまえて行動しろ。仮にも生徒の上にたって導く立場なのだろう」 問いかけるとグイッと身体を押さえつけられ、無理矢理指を押し込まれる。 「ーーッ……い、たッ」 昨日は仁川はこんなに痛い触れ方をしなかった。 思わず奥歯を噛み締めて、首を左右に振る。 「田中大介、お前は一体何様のつもりで僕を諭そうとするのだ」 問いかけられ指をゆるゆると動かされると、昨日とは異なり違和感ばかりが募っていく。 昨日はクスリを飲まされていたせいかもしれない。 「なに様ではないよ……ただ、思っていることを言っているだけだ。なに様なのは、アンタの方だろう」 指の動きが明確な意思をもって、ゆるゆると深い場所と粘膜を刺激し始める。 プライドの高そうな男は、どう説得すればいいかわからない。 元々友達を作るのも苦手なくらい、俺のコミュニティ能力は低い。 「減らない口は閉じてもらいましょう」 顎をおさえつけられ、開いた口に丸められたハンカチを押し込まれる。 ふわりと鼻腔をくすぐる香りに身体がビクビクと震える。 なんだ、この、においは。 不審に目をあげると、間近に近づいた久我は唇だけで微笑んだ。

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