部活を始めると、やはり身体を動かすことで発散できるのか、熱がさめないような事はなくなった。 結構な運動量なので、疲れと眠気が襲うのもあるかもしれない。 蜂屋や他のクラスメイトも、気軽に話かけてくれるようになり、風通しもいいと思えた。 ｢その眼鏡は、部活の時限定なんだな。キーパーとしても心強いけど、かなりいいと思う｣ 駒ケ谷は、ロッカールームできがえてから眼鏡をかけなおす俺の背中を叩く。 ｢……祖父の形見だから、なるだけ使いたいんだ｣ ｢そう言う大介がいいんだけどね｣ 久我からは何も言ってこないのは、沢崎が近くにいるからだろう。あまり1人で行動するなとは言われている。だから、寮までの帰りは駒ケ谷と一緒である。 眼鏡を変えた姿を見たが、目元が見えるだけでキリッとした容貌の自分の顔が見えた。 それでも久我や仁川みたいな華やかさはない顔だし、沢崎のような男らしいカッコ良さとかはない。 どこがいいのかは、俺にはわからない。 ｢大介、今日も帰ってから……夕飯に一緒にいかないか｣ 駒ケ谷の言葉にすぐに頷いて鞄を手にする。 ｢あー、仁川も一緒にくるかもな｣ 最近仁川もよくついてくる。 クラスメイトも、仁川と俺が付き合っていると思っているやつも多い。否定はしているのだが、当の仁川が否定しないのもある。 ｢さっきも練習ずっと見てたしな。仁川、本気なのかな。オレも本気だけどさ｣ しれっと横で駒ケ谷に言われて、ちらりと視線をやる。駒ケ谷にも返事はしていない。 この状況はよくないとは思っているが、俺の中でようやくできた友人を失いたくない気持ちが大きい。 卑怯だろうか。 ｢……勇大……あのさ……｣ 返事について何か言わなくてはと思うが、勇大は首を横に振って口元に手をあてた。 ｢まだ、言わないでいいから。ね……｣ 気持ちは変わるかもしれないからと、駒ケ谷は期待をしているかのようで、心が重たくなる。 駒ケ谷には色々救われて、この生活を続けられているのは、駒ケ谷のお陰でもある。 ただ、自分が嫌われたくないだけで、何も返さないのは、違うような気がした。 部活をしている時は楽しいし、一緒にいたいとは思うけど、それが恋とか愛とかじゃないのは、駒ケ谷だって気づいているはずだ。 ｢……勇大｣ ｢もう少し、オレは大介と一緒にいたいから｣ 多分、違うのだて伝えたらこの関係はなくなってしまうだろう。 俺には、それが怖かった。