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第40話

部屋に入り部屋着のジャージに着替えると、メガネをこの間買った軽いヤツにする。 祖父の形見のメガネを使い続けているのは、教室で勉強する時は軽いヤツだと何だか調子がでないので、やはりずっと使っているメガネにしている。 少しづつ慣らして行くべきと思いながら、部屋を出てリビングにいくと仁川がお湯を沸かしてくれている。 「あ!!ダイスケ、部屋着、こないだあげたやつにしとけよ」 仁川からは、この間着せてくれたのをプレゼントとしてもらったが、やはりジャージの方が楽でいい。 「自分の部屋だし、よかろう」 久我は俺の姿を見て、メガネを変えたことに顔を輝かせたが、ジャージには残念そうに顔を曇らせた。 見てくれで好きだとか言われるのも、なんだか申し訳ない気持ちがある。 派手に飾り立てたいとも思えないし、ジャージが楽だし、そんな自分を変えたくもない。 「生徒会長とかしているのだから、貴方も人に担がれる人間なのだし。俺ごときのために、格を下げたらいけない」 久我の隣に座りながら、仁川がわざわざ茶葉をポットに入れてお湯を注ぐのをながめる。 仁川は、本当に甲斐甲斐しい。 「……田中君は、本当に真面目な子ですね。こんなに僕に意見をする人は、今までいなかった……。しかも、僕のことを考えて言ってくれる……僕はどうしても君を右腕にしたい」 睫毛まで長く綺麗な目をぐっと向けられると、思わず頷きたくなる気分になる。これが、彼の人を魅了する術なのだろう。 たぱたぱたぱと仁川が紅茶を注ぎ、どこから持ってきたのか美味しそうなクッキーを皿に入れてテーブルに置く。 仁川も育ちが良いのだろう。 そして幼馴染だけあって、久我の好みは把握しているに違いない。 「……右腕はよく分からないが、貴方が一人で俺を誘いにくるなら、お茶くらいはしますよ。あ、でもクスリとか混ぜものをするのは厳禁です」 そんなことをしたら二度とお話はしないと釘を刺すと信用ないなとぼやかれた。 「まだ、信用はしていないですよ」 「わかりました。君にはゆっくり時間をかけていきたいと思いますよ」 その時、ダンダンダンと部屋の扉が激しい勢いで叩かれた。

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