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第2話
「おーい、広世。体育?」
更衣室に向かう途中、俺の横を追い抜きながら前方にいた広世に声を掛けたのは……名前、何だっけ?
生徒会のイケメンの
チャラ男だ。ふんわりした長めの茶髪に着崩した制服、だらけた歩き方。
認めたくはないけど、そう言う崩し方まで全て計算しつくされてるかのように、かっこいい。
その声に広世が立ち止まり振り返った。
「おう、バスケだよ」
と言いながら、ふわっと笑う。
クールな顔してあんな風に笑うの反則。ギャップ萌えっていうのか、女の子なんかいちころだろう。
「へぇ、メガネないと印象変わる。何か無防備でいいな」
追いついた相手 は、眼鏡を掛けていない鼻の頭を人差し指でツンと触った。まんざらでも無さげな広世が誘うように笑う。
「殺し文句か」
何このピンクの花でも散りそうな雰囲気?
二人共すらっとしてるから絵になる。茶髪と黒髪、チャラ男とクール。至近距離で笑いながら見つめ合っている。
モテるやつは男同士でも平気でこうやっていちゃつくのか?
チャラ男に合わせて前を向きながら、広世は細い目をさらに細めて笑った。
視線は後ろに残したまま。そう、俺を見ながら笑っていた。
ひやっとした、いや、ぞわっ?
これまで感じたことのない不思議な感覚だった。
(なんなんだ、一体…… )
そんなことより何で新井と(あ、そうだ、生徒会の新井だ!)あんなに仲がいいんだ?
チャラ男に肩を組まれ、歩きにくそうに二人で廊下を歩いて行く。
その背中が俺に向かって何か言いたそうに見えた。
追いつかないようにゆっくり歩きながら、胸の中に春の霞のようなものを感じていた。もう五月なのに。
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