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第20話
花火大会が終わった後の夏休みの残りの日々は、予備校の夏季講座に行ったり、友達とカラオケに行ったり、親戚のうちに行ったりしている内にどんどん過ぎていった。
授業がなくても、スポーツ科の野球の応援に駆り出されたり登校日に会ったりするから、何だかんだで顔を突き合わせては誰それに彼女ができたとか、東高 の生徒が男とデートしてるの見たとか、どこまでやったとかそんな話に花を咲く。
そして、夏休み最後の週。する事を探すのにも飽きて部屋でごろごろしていたらハラショから連絡が入った。
ハラダ>町に出て参考書を買って、ついでに映画見て遊ばね?
野原>行く、むしろ映画メインで! 何観る? ってか、彼女は?
ハラショの彼女は今週はずっと泊まり込みの英語合宿に参加しているから遊んでもらえないという。聞いてもいないのに、『広世はその日別の用事で町に行くから、時間が合えば合流するらしい』と教えてくれた。
もしかしたらデートなのかな。
ハラダ>広世が来なくて残念だな
野原>そうだね
ハラダ>すなおかよ
よく意味の分からないやり取りをして、すぐに母さんに小遣い貰えることを確認した。
****
平日の午前だけあって電車はがらがらだった。ほぼ貸し切り状態だから誰にも聞かれない気楽さで話が弾む。
「野原はどうよ? どういうのが好み?」
彼女できた、って夏休みに何回聞かれたんだろう。
女の子と二人で出かけたりあれこれする自分すらうまく想像できないのに、そんなこと聞かれてもよく分からないというのが正直なところ。必死で考えてようやく出てきた答えは、
「一緒にいる時に何もしゃべらなくても居心地がいい子がいいな。あと自分の世界がある子。べったり寄りかかられるのとか、無理」
「野原、意外とマイペースだしな。年上お姉さまに甘やかしてもらえばいいんじゃね? 見た目は?」
紹介してくれるわけでもないのにハラショの質問は続く。
「えー、うーん......うちの犬みたいな感じ?」
一呼吸置いて、ハラショが空の電車でなければ睨まれそうな勢いで大爆笑した。
「犬って、お前んちセッターだっけ?かわいいけど、それ女の子に言ったら怒られるだろ」
「…...性格もいい」
「そこじゃねーよ!」
セッターのナナは、マイペースだけどちゃんと人を見てる。基本誰にでも愛想がいいが、俺といる時だけ頭を預けてきたり見つめてきたりしてかわいいんだ。
そんなどうでもいいことばかり話している間に、電車は目的の駅に近づいて行く。
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