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第4話
翌日、出張に行く建人を見送ってやらなかった。
朝食のときすら、無視してた。
そんな僕に、建人は泣きそうなまま、出て行った。
苛々としながら仕事をした。
建人がかけてくる電話も、メッセージも無視。
……このまま、別れることになるのかな。
そんなことを考えると、建人と暮らしているあの部屋に帰りづらくて、居酒屋でひとり酒。
いい加減飲んで帰ると……何故か電気がついてる。
……ん?
なんで?
泥棒?
建人は明日まで出張だし……。
おそるおそるドアを開けると、玄関には建人の靴。
……どうして帰ってきてる?
「おかえり。
遅かったね」
「なんで帰ってきてるんだ……?」
泣き笑いの建人に、いっぺんに酔いが覚めた。
「根性で終わらせて帰ってきた」
「ああ、そう」
冷蔵庫からペットボトルの水を出して、渇いた喉に流し込む。
「明日、史朗の誕生日だろ?
だから仕事、一日で片付けてきたんだけど……」
「え?」
……忘れてた、わけじゃなかったんだ。
「それに俺が秘密を作ることが、こんなに史朗を傷つけるんだって、今日一日後悔してた。
俺はただ、史朗に喜んでもらいたかっただけなのに」
弱々しく笑う建人の顔に、なにも考えないでただ怒っていた自分に腹が立った。
「……ごめん。
今日一日、無視して。
悪かった」
「いいよ」
重なる唇に、ほっとする。
昨日、中途半端で放置したせいか、ベッドの中で建人は、いつも以上に僕の下で乱れた。
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