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〈健太郎、明日空いてる?〉 《おう》 〈もし大丈夫なら、ダブルデートしない?〉 《……はぁ?!ダブルデート??》 〈うん……〉 《って、……は?》 仄暗い部屋の中、ラインを表示したスマホの画面から明るい光が放たれる。 『……じゃあ、明日にしよう』 茶々丸が二人に相談を持ち掛けると、可愛い女の子の服が着られるとあって、ミルクだけが賛成した。 僕の彼女役には、ミルク。 思いっ切り彼女の前で、イチャイチャして見せ付けてやろう……という、逃がした魚は大きい作戦。 〈実は、デートに誘われたんだけど……どうしていいか解んなくて〉 《……マジか…》 〈うん、どうかな?〉 一旦そこで返信が止まる。 もしここで断られたら……と思うと落ち着かない。 ……でも、もしかしたら断られた方がいいかも……なんて思ってしまう。 スマホを握りしめたまま、ふぅっと溜め息をつく。 どういう理由であれ、健太郎に嘘をついて利用する事に変わりはないから…… 折り畳んだ膝を抱えたまま、スマホから顔を離す。と、体を丸め布団の隅で眠っている三人の姿が視界に入った。 「………」 ……僕があげた牛乳のせいで、突然苦しくなったって……アオは言ってた。 体を小さく丸め倒れていたアオの腕の中には、ぐったりとした二匹の猫。 アオの肋骨辺りが激しく上下し、苦しそうに口を開けている。 何で裸の人が、玄関前に…… ……そんな事を一瞬思ったりもしたけど、やっぱり放っておけなくて…… 「……!」 《さっき梨華に確認とった》 バイブに気付きスマホに目を移す。 画面に表示された返信文に、ズキンと胸が痛む。 ……梨華って、呼び捨てにしてる…… 「………」 確か終業式までは、杉本って呼んでた。 いつの間に、下の名前で…… 目の奥が熱くなり、じわりと視界が滲む。折り曲げた人差し指で、濡れた下瞼の縁をそっと拭った。 〈どうだった?〉 そう打ち込んでからハッとする。 ……梨華ちゃんは、僕と顔を合わせづらくないのかな…… 《OKだってさ》 「……そっか」 小さく呟き、再び目を擦る。 案外、強いんだな…… 「………」 返信が届く度に 気持ちがどんどん沈んでいく…… なんでだろう…… ……振られた時より、苦しい……

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