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チラリと二人の方を見ると、梨華と目が合った。
梨華はニコッと僕に微笑むと、テーブルに両手をつきこちらに少しだけ身を乗り出す。
「……ねぇ小太郎くん、私もそのパフェ食べたいなぁ」
メニュー表を遠くから覗いた後、目線を上げた梨華は必然的に上目遣いになる。
「食べても、いい?」
「……え、」
その可愛らしい仕草と潤んだ瞳に、ついドクん、と胸が高鳴ってしまう……
『……平野くん……好き』
学校の中庭に呼び出され告白された時、梨華は風の悪戯で乱された横髪を耳にかけ、可愛らしい瞳を僕に向けてくれた。
あの時の光景と感情が蘇り、僕の胸を苦しくさせる。
……梨華ちゃんの気持ちは、もう僕にないと解っているのに……
なんでこの胸は期待して……すぐに早い鼓動を打ってしまうんだろう……
ふぅ、と溜め息をつく。そしてふと、ミルクに見透かされてはいないかと、ちらりと視線を向けた。
「………」
ミルクは獣耳をピンと立て、梨華をじっと見据えていた。
その瞳はどこか尖っていて、闘争心を剥き出しにしている様にも見える。
「………」
……だけど、これも演技なんだろうな……
さっきはスキンシップ激しすぎだったけど。
でも、ミルクがそうしてくれたから……気まずい空気にならなかったんだよね。
「うん……」
笑顔で梨華にそう答え、テーブルの端に置かれた呼び鈴に手を伸ばした。
***
「ミルクちゃん……だっけ?
もし違ったらごめんね………もしかして、……男の娘……?」
身を乗り出したまま、梨華は探るようにミルクを見つめる。
その言葉に驚き、僕はミルクに顔を向けた。
「……うん、そうだよっ」
僕の心配をよそに、ミルクは案外ケロッと笑顔で答え、Vサインをしてみせる。
「……えっ、えぇ?……じゃあ……小太郎くんと、男同士……だよね」
「うん!……でも、そういうの関係なく、ボクはコタローが好きなんだよねっ……」
そう言いながら、内腿に置かれたミルクの手が恥部の方へとゆっくり撫で上げられていく。
「……ぇ、ゃ……み、ミルク……、」
その手を掴んで阻止するも、ミルクは少し意地悪そうな瞳を僕に向けるだけだった。
「……ほらぁ、可愛いでしょ?
ちょっと攻めると、コタローってすぐこーんな顔しちゃうんだよっ……!
……あとねっ」
そう言ってはしゃぐミルクに顎先を掴まれ、強引にそちらに向けさせられる。
そしてクイッと顔を持ち上げられた、
その時だった……
ドンッ!
突然響く、大きな音。
驚いて見れば……
健太郎がコップをテーブルに叩きつけていた。
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