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「止めろよ、そういうの!」
眉尻をつり上げ、鋭い目付きをした健太郎がそう言い放つ。
「困ってんだろ、さっきから」
その言葉に、ミルクの手がゆっくりと離れる。
……健太郎……
『止めろよ、そういうの!』
小学生の頃。
健太郎はそう言って、僕をからかうクラスメイトから助けてくれた……
最初は友達でもない、ただのクラスメイト。
健太郎は地味な僕とは違い、キラキラした集団の中にいて……
僕とは別世界の人間だと思っていた。
『何かあったらすぐ俺に言えよな』
……それがいつの間にか、僕の一番近くにいて、守っていてくれていて……
「……け、健太郎……」
慌てて口を開くと、それをミルクが遮る。
「そうかなぁ……
……コタローはさぁ、ボクに慰められると、可愛い顔して鳴いてくれるよ?」
ミルクの眉尻がつり上がる。
ニヤリと口角を上げ、大きな瞳は鋭く健太郎を睨む。
挑発的なその態度に、僕は慌ててミルクを止める。
その意味深な台詞の意味もわからずに……
「……ミルク、止めて……!」
一触即発状態の二人。
今にも立ち上がりそうな、ミルクの腕を掴む。
「んだよそれっ!」
健太郎がそれに乗っかり、勢いよく立ち上がる。
「……ナニって。そのままの意味だよぉ」
更に挑発したミルクは、掴まれた手を簡単に外すと、僕の後頭部に手を回し……
「……え」
ぐいっと引き寄せられた僕は
二人の見ている前で
唇を、奪われていた………
***
「………」
ダブルデート中の空気は見事にぶち壊れ、カフェを出た後、健太郎達とはすぐに別れた。
帰り際、貼り付けた笑顔の梨華ちゃんが、健太郎の手を握る姿を思い出す。
「ミルクはぜんっぜん悪くないっ」
アパートに帰ってからも、ミルクはふて腐れながらそう言い放つ。
僕にした事や、協調性を欠いた行為は全く反省していないらしい……
茶々丸とアオは、冷たい床が気持ちいいのか……床に丸まってよく眠っていた。
起こさない様にそっと近くを通ると、二人の獣耳がピクッと動く。
「……あの健太郎ってヤツ、なーんかむかつくんだよねぇ……」
服を脱ぎ捨てながら、嫌悪を露わにした顔つきで独り言のように呟く。
「………」
反省はしていないらしい。
……だけど、僕の事を思ってやったのだというのは伝わる。
……だからこそ……
「………」
口を閉ざしたまま部屋から出た。
「……ねー、聞いてよ茶々丸ぅ」
ミルクの甘えた声が、閉まるドアの隙間から聞こえる。
僕はポケットからスマホを取り出した。
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