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「……そう言えば、おばさんは?」 階下から戻った健太郎に尋ねる。 さっきから健太郎が麦茶を用意してるし、姿も見当たらない…… 「いねぇよ。家族みんなで旅行中」 「……え」 「俺はバイト休めなかったから、居残ったけど」 「そ、そうなんだ……」 麦茶の注がれたコップを受け取る。 冷えたそれは、汗ばむ僕の手の指先から 心地よく熱を奪っていく。 「一人って気楽でいーじゃん!って思ったけど、……案外大変なんだな」 片膝を立てて座った健太郎は、麦茶を持ったまま僕に顔を向けてそう言った。 「飯とかさ、作るのメンドーだし。洗濯とか溜まるし。部屋は汚くなるし」 健太郎の言葉を聞きながら、思い返すのは半年前── 『なら、うちに来いよ!』 父子家庭……父一人子一人の二人家族である僕は、残業続きの父とはすれ違いの生活を送っていて、自分の事は自分で何とかやってきた。 今年の春に父の転勤が決まった時…… 今の高校に入学が決まっていたし、健太郎とも離れたくなくて。 父に話して、半年……ここに残る事を許して貰った。 その時心配した健太郎が、うちに来いよって、そう言ってくれたんだけど…… 健太郎のおじさんやおばさんはいい人し、何の問題もない……けど…… 賑やかな健太郎の家の環境に、僕が馴染める自信もなく…… 一人で生活する事を、選んでしまった。 寂しい……と思う事はある。 でも、バイトで気が紛れる事もあって…… ……それに。 今は、茶々丸達がいるから、そんなに寂しくない、かな…… 麦茶を一気に半分程飲む。 汗で水分が奪われ、渇いた喉が潤う。 気付けば自然の風は止まり、懸命に首を振る扇風機の熱い風が、一定のリズムで僕の髪を揺らす。 肘の関節に溜まった汗を拭いた後、残りの麦茶を一気に飲み干す。 喉元に流れた汗がつぅ、と鎖骨へと流れ落ち、その不快な感覚に思わず口にしてしまう。 「……暑いね」 正座を崩し、あひる座りをする。 ゆったりとした服の胸元を掴んでパタパタと風を送るも、解消するには至らない。 すぐにじわりと肌が汗ばみ、一緒に体力も思考力も奪ってゆく…… 「服……脱いでもいい?」 背筋を伸ばし、少し蕩けた頭のまま首を傾け、健太郎に瞳を向ける。

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