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apology-1

-2- 首筋をつぅ、と流れる汗。 それをハンドタオルで拭う。 もう何度目だろう…… 全開の窓の下には、フル稼働中の首振りの扇風機が一台。 生暖かい風が当たると一瞬だけ心地よくなるけれど、この蒸し暑さを解消するには至らない。 僕は健太郎の部屋に来ていた。 昨日からエアコンの調子が悪く、使えないらしい…… 冷たいもん用意するから待ってろ、と階下へ降りて行った健太郎を見送った後、僕は押し入れの扉に手を掛けていた。 ……こんな蒸し暑い部屋に、いる訳ないよね…… ふとそんな事を思い、開けるのを躊躇してしまう。 それというのも、昨日…… 『……ねー、聞いてよ茶々丸ぅ』 ダブルデートを早々に切り上げ、帰宅したミルクが寝ている茶々丸を揺り起こした。 『あいつから、匂いがしたんだよねぇ……』 僕が廊下で健太郎とラインをしていた時、茶々丸に健太郎の事を色々喋ったらしい。 『……小太郎』 ラインを終えたタイミングでドアが開き、茶々丸が顔を出す。 『健太郎という男は、猫を飼っているのか?』 『……え…、飼ってないと思うけど…』 『そうか。では健太郎の家に行って確かめてきてはくれないか?』 「……」 茶々丸に、こっそり探して欲しいって言われたけど。 ……やっぱり猫を飼ってるかどうか、聞いちゃった方が早いよね…… 「小太郎、開けてくれっ、」 そんな事を考えていると、ドアの向こうから健太郎の声がした。 テーブルに麦茶の入ったコップが二つ。 表面のガラスもかなり汗をかき、足元に水溜まりができていた。 「……で、お詫びってこれかよ」 麦茶の近くにある夏休みの課題ノートを見た健太郎は、あからさまな苦笑いを浮かべてみせた。 「うん、早くやっちゃった方が楽だし 解らない所あったら教えるから」 「……っんと、真面目だよな……小太郎は」 そう言いながらも、健太郎は机から課題ノートを取り出す。 相向かいに座り広げたノート。 シャーペンを走らせる音。 時折入る窓からの風に助けられ、湿った腕に張り付いたノートを剥がしながら、暫く無言のまま課題を進めていく。 「……入れてこようか?」 「え……?」 健太郎に声を掛けられて、気が付く 口に付けたコップの中身が、空っぽである事に。 「……あ」 「はは、待ってろ」 僕のコップを手から奪った健太郎は、自分の麦茶を一気に飲み干すと、立ち上がって部屋から出ていった。

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