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「……けん、たろー……シて……もぉ、オカシクなっちゃ……」 よく見れば、違う…… だけど、何となく僕に似ている…… その子の獣耳が垂れ、眉尻は下がり 両膝をつき、床に付けた片手で上体を支えると もう片方の手が後ろに回る 「……挿れ、て……おねが……あぁっン!」 熱の籠もる体がびくんと跳ね 物欲しそうに開いた口から 濡れて光る赤い舌がチラリと見える そしてぽたぽたと、立ち上がった茎から 涎の様に粘液を床に垂らす 「………」 サァッと全ての熱が、足元から引いていく…… さっきまで感じていた感情もなにもかも……全てを連れて…… 「……キナコ」 健太郎の口から、小さく漏れる言葉 キナコ……キナコ…… 『……キナコみたいだな』 アオが呟いた言葉が一瞬で蘇る ……どういう、事……? 瞬間、雨の日に見た捨て猫の中に 薄茶色の猫がいた事を思い出す 『……大体あの健太郎ってヤツ、むかつくんだよねぇ……』 『アイツから、匂いがしたんだよね』 ミルクの台詞の意味…… ダブルデートで、挑発行為をした理由…… 『健太郎という男は、猫を飼っているのか?』 茶々丸の質問の真意…… 「……!」 上体を起こし 思いっ切り健太郎を突き飛ばす 触られた所が、急に汚された様で気持ち悪い…… 体が小刻みに震えて止まらない 健太郎の下から足を引っ込め、捲り上がった裾を引っ張り下ろす そして膝を折り畳むと 慰める様に両手で自分を抱いた ……健太郎は、このキナコって子と…… 「……っ、」 もう、何が何だかわからない 健太郎の本当の気持ちが……全然わかんない……! 感情が込み上げ、瞳から涙となって次々と零れる それを両手で懸命に拭った 「……小太郎、」 「触らないでっ!」 伸ばされた手を拒絶する ……酷い、ひどいよ……… 健太郎なんか……嫌いだ……!

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