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威嚇したアオの口から、八重歯の様な鋭い歯がチラリと見える 「……ぁ……」 険しいアオの表情…… その気迫に、僕は何て答えていいか解らない 「……ご、ごめ……」 急に体が小刻みに震える 寒い訳じゃないのに指の先が冷たく痺れる アオの手に力が籠もり、掴まれた所が痛い…… 「オイ、聞いて………」 視界が歪む……アオの顔が滲んでぼやけていく 瞳から熱い涙が溢れ零れると、アオの狼狽える様子だけが見える 「……これ、は何だ」 壁をついた方の手が、僕の鎖骨の下に触れる 「誰かにやられたのか……!?」 アオの気迫に圧されるも……僕は答えられなかった…… 小刻みに首を左右に振った後、アオから視線を外し、溢れた涙を自由な方の手で拭う 「……チッ、」 舌打ちが聞こえたと同時に、アオが掴んでいる僕の腕を引っ張り上げた 「この強い匂いは、健太郎って野郎のだな」 「………」 再び鼻先が触れる程に近付き、首筋をくんくんされる 「…あ、アオ……やめ……」 「何をされたんだ……キナコもそこにいたんだろう?」 「………」 「……答えろ!」 ビクンッと肩が震える 「……ご、ごめんなさ……」 条件反射の様に謝るも、質問の答えになっていない為か、見下げるアオの顔は険しい 「ごめ、んなさ……ゃめ……止めて……」 胸の中が苦しくて……どうしていいか解んなくて…… ……もう、本当に頭の中がぐちゃぐちゃで…… 涙で、顔もぐちゃぐちゃで…… 手の甲で、何度も雑に涙を拭った 「……小太郎に何をしてるのかな?……アオ」 気付けばすぐ傍らに、腰に手を当てて立つ茶々丸の姿があった それに気付いたアオが、フンと鼻を鳴らし手を離す 「……よしよし、怖かったな……」 腰を落とした茶々丸が、声を押し殺して泣きじゃくる僕の肩にそっと触れ、優しく引き寄せる そして僕の顔をその胸に押し当て、後頭部を撫でた その手が温かくて、心地良くて…… スン、と鼻を啜り、茶々丸の胸に顔を埋める わかんない……けど 茶々丸、お母さんみたい…… 小さな子供に還ったような錯覚を起こし、茶々丸に甘え縋りつく 緊張した心と体が、次第に解れていき 泣きじゃくりながら、意識が遠退いていくのを感じた ……すー、すー、 僕の寝息を感じた茶々丸は、背中を軽くトントンと叩く 「……アオ、コタロー泣かせちゃダメだよぉ」 茶々丸の背後から、眉尻を吊り上げたミルクが現れる 「お、オレ様は……」 「ほんっっと!あの健太郎ってヤツ、むかつく……」 アオの言葉を遮ってミルクがそう言い放つと、茶々丸の手の動きが止まる 「……そうだね、」 茶々丸の口から同調した言葉が吐かれたのを、既に意識を手放してしまった僕には届かなかった

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