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健太郎の家に辿り着き、震える気持ちを抑えてチャイムを鳴らすと、暫くしてドアが開かれる
「……小太郎」
その向こうに、健太郎の驚いた顔があった
僕が突然来るなんて、思わなかったんだろう……
揺れた健太郎の瞳に、僕の心が大きく揺さぶられてしまう
それは今までとは違う……胸を焦がす様な、体が熱くなる様な……
あんなにぐしゃぐしゃで混乱して、絡まった糸みたいになっていたのに
健太郎の顔を……目が合っただけで、嘘みたいにすうっと解けていく……
「……健太郎…」
健太郎とのキスは……嫌じゃなかった
その後された行為も、急すぎて気持ちが追いついていけなかったけど……
……でも、拒絶してしまう程、嫌じゃなかったよ
だから、健太郎……そこは謝んないで……
そうされたら僕は、どうしたらいいかわかんなくなっちゃうから……
僕の思いを健太郎に伝えたくて、口を開いた時だった
「……けん、たろー」
背丈が低く僕と同じ髪色をしたキナコが、廊下の奥からペタペタと可愛らしい足音と共に近付き、健太郎の背後に隠れる
そして健太郎のTシャツの裾を掴み、そこから顔をひょこっと出し、じっと様子を伺っていた
「………」
健太郎の視線が僕から外され、体ごとキナコへと向けられる
健太郎のであろうブカブカのTシャツがずれ、大きく開かれた衿口から剥き出された、キナコの華奢な肩
その首筋から鎖骨の端まで、幾つも散った赤い印……
「………」
……僕が嫌だったのは……
健太郎は僕だけじゃない、って事……
感覚が無くなりそうな手を、ギュッと握って拳を作る
その手を、温かな掌にそっと包まれる
ハッとして見れば、その手の主は隣に立ったミルクだった
「……キナコ、こっちおいで?」
ミルクがそう言うと、キナコは怯える様に健太郎の背中に完全に隠れてしまう
「オイ、貴様!」
僕とミルクを押し退け、アオが強引に玄関の中へと押し入る
そしていきなり健太郎の胸ぐらを掴み捩り上げた
「……貴様、小太郎に何をした」
アオが鋭い八重歯を剥き出し、低く唸る
衿部分が健太郎の首に食い込み、頸動脈が絞まった
「……あ、アオ……!」
止めて……死んじゃう……!
駆け寄ろうとして、ミルクの手にぐっと止められた
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