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苦しいのか、顔を真っ赤にした健太郎が、アオの手首を掴んで力ずくで引き剥がす
「……って、いきなり何すんだよっ」
アオの気迫に一瞬圧されながらも、健太郎は喉元に手を当て眉間に皺を寄せ、アオを睨みつける
「……てか、誰だよお前!」
その態度が気に入らなかったのだろう
振り上げられたアオの右手の指が、爪を立てるように全て曲げられる
その時、健太郎の陰に隠れていたキナコが姿を見せ、両腕を伸ばし、アオの体をトン、と押した
それに驚いたアオが、キナコの方へと顔を向ける
「……だめ、アオ……けん、たろーは何にも、悪くない……」
尚も両手でアオの体を押しながら、左右にふるふると頭を振る
その度に、柔らかい髪がふわふわと跳ねる
「道端で倒れてたキナコを……助けてくれたの……
……それで、雨で濡れてたから、お風呂に入れてくれて……服も着せてくれて……それで、ご飯も食べさせてくれて……それで、それでね……」
必死で訴えアオを見上げたキナコの瞳から、大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちる
「……きちゃったの、キナコ……初めて、はつじょーき……」
その言葉に、アオの顔から険しさが消え、一瞬目を見開く
僕の手を握るミルクの手もピクリと反応した
……はつ、じょうき……?
瞬間、淫らなキナコの姿を思い出す
『……あつ、い……もぉ、……ガマ、ん…できなっ……』
『……けん、たろー……シて……もぉ、オカシクなっちゃ……』
瞳を潤ませ、苦しそうに割れた唇から、滴る程濡れた赤い舌を、たらんと垂らした姿……
その妖しい姿を、今目の前にいるキナコから想像するには、幼すぎて色気が足りない
「だから、キナコが……けん、たろーにお願いしたの……
……けん、たろーね、……キナコに優しくしてくれた……」
涙ながらに訴えるキナコを目の当たりにし、アオに纏った険しいオーラが抜け落ちていく
「……キナコ、…けん、たろーと一緒にいる……けん、たろー大好き……優しいから、好き……」
「………」
健太郎は、優しい……
……確かに優しいよ……
ちょっと乱暴な所とか
八方美人な所とかあるけど……
胸がズキン、と痛む
鼻の奥がツンとし、目の縁に涙が溜まっていく
堪える様に手で胸を押さえると、ミルクが繋いだままの僕の手に、ギュッと力を籠めた
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