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「……うん、わかった」
僕だと、本当に気付いてないんだろう……だけど、それでもいい……
今は、アオの力になりたい……
コップに水を汲み、温くなってしまったタオルを流水で冷やし、固く絞る
……あの時アオが言ってた景虎って……
もしかして、僕がアオ達を見掛ける前に拾われていった猫とか、かな……
もしそうなら、今頃、どこかでアオ達と同じように、人間の姿に……
……って、牛乳飲んでないから、もしかしたら猫のまま、なのかもしれないけど……
「………」
家族のように一緒に生活してきたのに、人間の都合で、ある日突然捨てられて………
それで、兄弟まで離れ離れにされたら……やっぱり、辛いよね……
僕は父と話し合って、お互い納得した上で離れて暮らす事になったけれど………そういうのとは、全然違う……
……だからアオは、僕からキナコの匂いがした時……僕に威嚇して……
それだけ仲間想い、って事……なんだよね……
あの日だって……自分がどんなに苦しくても……ぐったりしたミルクと茶々丸をしっかりと腕に抱えて……僕を探し出したんだから……
「……アオ、お水持ってきたよ」
アオの傍らに座り、声を掛ける
……はぁ、はぁ、
返事もできない程辛いのか、瞳は固く閉じたまま、苦しそうな呼吸を繰り返す
……アオ……
そっと手を伸ばし、呼びかけようとしたトキだった
「……、……」
アオの唇がゆっくりと動く
聞こえなくて、床に両手をつきアオの唇に耳を近付ける
「………み、ず…」
小さく、掠れた声……
「……うん、ここにあるよ……今、起こすからね」
アオの首の下に腕を差し入れ、アオの体を起こす
だけど、ぐったりとしたアオの体は思ったより重く、一旦僕の膝の上にアオの頭を載せた
接した所が火傷してしまうんじゃないかと思う程、アオの体が熱くて……酷い汗で……
「……飲めそう?」
少しだけアオの頭を擡げ、コップを口元に当てる
「………、っ」
だけど、その水は受け入れられず、アオの口端からだらだらと流れ落ちる
「………」
アオが僕に反抗的な態度を取らなかったのは
警戒心が少しでも解けたからとか、誰かと間違えてるからなんかじゃない……
拒絶、したくても……できないくらい……
アオが弱ってるって事だ……
……どうしよう……
このままじゃ、アオが死んじゃう……
「………」
思うより先に、コップに口をつけ水を含む
そして、アオの少し割り開かれた唇に、僕の唇を当てた
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