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アオの指先が、胸にある小さな膨らみの手前で止まる 荒い息を飲み込み、アオの唇が僕からスッと離れた 「……オレ、は…」 アオの瞳が揺れ、弾かれた様に僕から手を離す 「……貴様…………オレ様に近付くなと、……忠告した筈……だぞ…」 強く、だけど何処か戸惑いながら弱々しく、吐息混じりに吐かれる 離れたその手は、自身の顔に軽く当てられる 今まで見せた感情も、全て覆い隠すかのように…… 「……ごめん、なさい……」 先程まで、あんなに僕を求めて…… あんなに深く……触れ合ったのに…… 僕の声がまるで聞こえないかのように、アオは僕から顔を背けた 「……アオ……」 戸惑いながらも、そっと手を伸ばす 「触るなっ!」 アオの声が、その手をピシャリと払いのける 宙に浮いたまま届かないそれが、行き場を無くし彷徨う…… ……中途半端な、僕の心みたいに…… 「……これ以上されたくなければ、あっちへ行ってろ!」 僕から退き、背を向けたまま布団へと体を沈める ……はぁ、はぁ、はぁ 苦しそうに背中を丸め、苦痛に堪える姿に ギュッと胸が締め付けられる ……アオ…… 少し乱れた服を直し、ゆっくりと身を起こす そしてそっと、届かなかった手を自身の胸に引き戻す ……アオの、好きにしてくれて……良かったのに…… こうなったの……僕のせい、だし………求められて……嬉しかった……から…… 「……単なる、発情期……だ…… 下僕猫達は、誰彼構わず……発情して、交尾をする時期……だ……」 吐息混じりにアオが科白を吐く 「この、時期になれば……オレ様も例外では無く…… ……貴様如きにも……容赦なく、反応する…… 感情など……全く無くても、だ……」 胸の奥が、ズキンと痛む ……感情が、無くても……? 求めたのは、僕だからじゃなくて……本能で仕方なく……? アオにとっては……僕とは……苦痛だった……って事……? 胸に当てた手を服ごとギュッと握る 少しだけ、甘えた様な瞳を見せて 重ねた唇も、絡めた舌も……全部…… 「……オレ様にも、相手を選ぶ権利、くらいはある、………… …………貴様とは、しない……したくない……絶対に…… ……だから……これ以上……構う、な……」 「………」 床に置いたままのコップに手を伸ばす ……指が、小さく震える…… 僕は、アオに何を期待していたんだろう……

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