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stray heart-1

-4- ……お父さん、お母さん……どうして……? 物音がして夜中に目を覚ますと、リビングで父と母がいがみ合っていた それはあからさまな険悪ムードで、お互い棘を剥き出し、近寄ろうものなら柔肌を突き刺すように、相手を傷つけ合っていた ……僕がいる時はあんなに仲良くしてるのに…… サイドボードの上に飾られた写真 そこには赤ん坊の僕を抱いた母と父が、体を寄せ合い柔やかな笑顔を浮かべている あの時まで僕は、両親の笑顔は本物だったと思っていた…… もしあれが嘘なのだとしたら ……僕は……ちゃんと愛されてきたのだろうか…… カッチ、カッチ、カッチ、…… 暗闇の中、振り子時計が忙しく時を刻む ……両親が、離婚…… 大きいランドセルに背負わされた僕は、手を繋いだ母と家を出た 四畳一間の古びたアパート 年季の入った独特の畳の匂い 西日の当たる寂しい部屋 これからはママとずっと一緒よ、小太郎…… 母が、柔やかな笑顔を向け、僕を正面から抱き締めた後……僕の肩に手を置く…… 世界で一番愛してるわ ……小太郎…… 「……小太郎」 ハッとして瞼を開ける 僕の肩に置かれた手の存在に驚いて振り返った 「寝るなら布団で寝なさい、ね?」 そこには、爽やかな笑顔を浮かべた茶々丸の姿があった 「……え」 いつの間に寝ていたのだろう…… 台所の丸椅子に座り、小さなテーブルに顔を伏せていた事に気付く 「うん……」 ………あんな夢を、見るなんて…… 闇に葬った、遠い過去 苦い、経験 もう二度と、思い出したくないと思っていたのに…… テーブルを見れば、アオに口移しで飲ませたコップがそのまま置かれていた その水を、ぼんやりと眺める 「……そうだ、小太郎 今夜はアオに近付かない方がいい」 冷蔵庫にペットボトルを詰め込む茶々丸が、涼やかに言う 「どうやら発情期に入ってしまったようだからね」 『触るな!』 『選ぶ権利、くらいはある』 アオに言われた言葉が鮮明に蘇り、再び僕の心を突き刺し容赦なく抉る 「それを解った上で近付くなら、この茶々丸は止めないが?」 冗談めいたトーンでそう言うと、茶々丸は一層爽やかなキラースマイルを僕に寄越した 「………」 だけど、それを返せる余裕など 持ち合わせてはいない……

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