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駅の裏手……ショッピングモールにある方とは反対にある通りを歩き、暫くすると廃れた細い道へと入る 「………」 何となく不安に感じキョロキョロとすれば、キャッチの男は僕の手を取って握る 「すぐそこだから!」 それを払拭するかのように笑顔を見せる ……その笑顔が、やっぱり健太郎に似ていて…… 「…………うん」 たったそれだけの理由…… 薄くなってしまった鎖骨下の痣……健太郎の面影に縋るように、僕はその手に導かれた 利用者がいるのかわからない程狭い、コインパーキングの隣にある古びたビル その一階にあるテナントは、募集の紙が貼られてあり、その脇……歩道から少し奥まった所に、大きく口を開けた通路がぽつんとあった 「……ちょっとごめんっ!」 その入り口へと僕の手を引きながら、キャッチの男はポケットからスマホを取り出す 「あ、凌さんっすか?………あー、その件はもうバッチリっすよ!イメージ通りの子掴まえたんで……」 仄暗い通路に足を踏み入れる 少しだけひんやりとした空気に変わったのを肌で感じた 繋がれた手はそのままに、キャッチの男は肩と耳でスマホを挟むと、エレベーターのボタンを押す 「………」 何、してるんだろう…… 不安がどんどん募っていくのに 繋がれた手だけが、少しだけ心地良い ……両親が離婚してから 僕の氏が変わった それを好奇心だけで尋ねてくる同級生が嫌だった…… だけどすぐにその理由は知れ渡り、みんなの視線が僕を蔑むようになった たったそれだけ…… それだけで世界は大きく変わる 「どうぞーっ」 チン、と鳴って開いたエレベーターのドアを手で押さえた男は、僕に笑顔を向ける そして、まるでお姫様をエスコートするかの様に、繋いだ手を少し掲げ中へと導く 小さなその箱の中に二人乗れば、定員ではないかと思う程狭く、物理的に男との距離が縮まったように感じた 「………」 ……そういうの、止めろよ! 僕の周りを静かに襲い 僕の心まで巣食おうとする闇を 健太郎が、引き裂いてくれた……… 繋がれた手にキュッと力を籠める すると男が反応し、少しだけ身を屈めて僕の顔を覗き込む 「……緊張してる?」 なにかあったら、俺に言えよ? その笑顔は、沈んだ僕の心を掬ってくれた時の健太郎のそれと重なる

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