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「……え」 ピンクと白を基調とした壁紙 キングサイズの白いベットの上には、フリルのついたピンクのハート型クッションが二つ そのベットを取り囲むように、機材が置かれスタッフが数人立っていた 先程までの雰囲気とはガラリと変わり、一気に緊張感が走る 「……じゃあ、まずこれにサインしてくれる?」 スタッフの一人が僕に近付き、契約書を見せる 「……え」 「あー、これは謝礼金渡す関係で必要なものだからさっ!」 戸惑う僕にキャッチの男は、健太郎に似た笑顔をして見せる 「………」 「……んじゃ、これに着替えて」 言われるがままにサインをした後、畳まれた服を手渡される 「うん、あそこで着替えて!」 「……」 戸惑いを隠せずに健太郎に似た男を見れば、その笑顔で僕の背中を軽く押してくる 部屋の隅に上から吊された簡易的な目隠しカーテンの陰に隠れる そして手にした服を広げて見れば、それはチアガールのユニフォームであった 「……あ、あの……僕……」 まさか……とずっと思ってた ダブルデートの日、ミルクと歩いていて女の子に間違えられてナンパされたし…… ……だけどあれは、ミルクがいたからだとばっかり思ってた…… 「早くしてくれないかなぁ……次の撮影押しちゃってるからさぁ……」 カーテンの向こうで待っている彼が、少しだけ苛ついた声を上げる 「……は、はい……」 その声の変化に、胸の中がざわりとした スタッフの指示でベットに膝をついて上がる チアガールのユニフォームの裾が短く、ウエストラインや臍が見えてしまっている それに、プリーツスカートもかなり短くて…… ベットを取り囲む男性スタッフの視線が気になり、すぐにあひる座りする そして、もじもじと落ち着かず裾を懸命に引き伸ばす そんな僕に近寄って腰を下ろした男性スタッフが、僕の顎を持ち上げ、持っていたリップスティックを僕の唇へと寄せる ……小太郎くん……? いつの日からか、母と僕の二人だけの生活に、見知らぬ男性が混じる様になった 父よりも……多分母よりも若い………茶色に染めた癖っ毛の男 学校から帰ったばかりで、まだランドセルを背負ったままの僕に、手招きをする お母さんに似て、可愛いね 男の前に座ると、少しだけニヤリと口元を歪めた男が、手にした母の口紅を少しだけ横に寝かせ、僕の下唇に当てた これ塗ったら……気持ち良いこと、しようよ……

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