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stray heart home-1

-5- 繋がれた手 それは、健太郎に似た男ではなく…… ……どうして あまりにも現実味のない展開に、頭の中が混乱しうまく整理がつかない 階段を駆け下りビルを出る そしてそのまま細い路地を抜け、なるべく人通りの多い道のある方向へと走る 辺りはすっかり暗く、外灯も殆どない ……はぁ、はぁ、 力強い大きな手 広い背中…… 闇の中を、切り裂いて 僕を光ある方へと導いてくれる…… 「……ここまで来れば大丈夫か……」 コンビニが現れ、人の往来がそれなりにある道に出ると、やっと足が止まる 走ったせいで息が上がり、立ち止まった瞬間、体中から沢山の汗が噴き出す それは僕を救ってくれた相手も同じで…… ……はぁ、はぁ、 激しく胸を打つ鼓動を押さえ、息を整える 「ちょっと待ってろ」 繋がれた手が、離れる ……待って…… その熱にすがるように 彼の手を追い掛ける ……一人に、しないで…… 塗料や薬剤のついた、白い長袖をキュッと掴む そうすれば、長い髪を無造作に縛り手拭いを頭に巻いた彼が、少し驚いたように振り返った 「……傍に、もう少し…だけ……」 体が……今になって、ガクガクと震えてしまう……か細く吐かれた声まで、どことなく震えていた 少しだけ引っ張って見上げれば、彼は軽く息を吐き、触れない程度に傍に寄ってくれる ……たった一度…… バイト先に来てくれた、お客さん……なだけなのに…… どうして、僕を…… そう思えば思うほど 彼が眩く見えてしまう 「………」 掴んだ方とは反対の手を軽く握り、胸に押し当てる そして瞬きも忘れ、すっきりとした奥二重の瞳をぼんやりと見つめた わからない……けど…… 健太郎が、僕を蔑むクラスメイトから救ってくれた時に、感じたように 胸の中が、じんわりと温かくなって………ううん、それよりももっと、ずっと熱くて…… ……今、すごく ドキドキ……してる…… 「………」 指先が震える だけど、胸の中は甘く甘く痺れて…… 瞳が揺れ、視界からその奥二重を消した ヘン……僕、この人に 名前も知らない他人なのに…… ……ギュッて、抱き締めて……貰いたい この人の息づかいも匂いも もっと近くで感じたい…… 頬がみるみる熱くなり、走ったからではない火照りを感じる

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