52 / 81

4

胸の奥が、ズクンと甘く脈打つ 頬がどんどん熱くなり、どんどん彼に引き寄せられていく…… 僕が言葉を返さなかったからか、ソファから背を離し、彼が振り返る それにハッとして、慌てて口を開く 「……あ、あり、……ありがとう……ございます……」 服をギュッと抱き締めたまま、背中を丸め頭を下げる 「んなのいいから……」 そう言いすぐに、またその背をソファに沈めた 「早く着替えな」 「……は、はい」 ソファの背後……彼の死角にいる事を確認し、腕をクロスして裾を掴む ただ、着替えるだけなのに……カァッと頬が熱くなる 考えてみれば、僕は男で、同性の前で上半身を曝したって……全然ヘンじゃない、のに…… 高鳴る胸を抑え、えいっ、と一気に捲り上げれば、外すのを忘れていたカチューシャが最後引っ掛かってしまう 「……あぁ、着替えるなら……」 突然彼の声がし、慌てて服を戻そうとする けど、襟口に引っ掛かったカチューシャが邪魔をし、元にも戻せずパタパタと慌てる 「なに……やってんだよ……」 「……ご、ごめんなさ……」 彼の気配がすぐそこまで迫る と、カチューシャがゆっくり引き抜かれた それにより、するっと服が元の位置に戻る 「………」 裾を懸命に引っ張り下げ、醜態を晒してしまった事に恥ずかしさを感じ、顔を向けられない…… 「……ほら」 俯いたままのその視界に、猫耳カチューシャが映り込む 「……それと、浴室があっちにあるから……シャワー浴びるなり着替えるなり……そっちでしてくんねぇかな……」 案内された浴室前……簡易的なパーテーションの内側で、ユニフォームを脱ぐ 「………」 あのビル内で、見知らぬ男に組み敷かれ、舐められたそこが気持ち悪い…… ……嫌なのに、感触がまだ残って…… プリーツスカートのファスナーを下ろし、するりと下に滑らせ足を引き抜く その下に現れた、フリルレースのついた女性用の下着…… その上からなぞられた感触が、鮮明に思い出される ……なんで、抵抗できなかったんだろう…… ギュッと目を瞑り、その下着を脱いだ 浴室のドアを開け、足を踏み入れる そして蛇口をひねり、温度調節をしながらシャワーを浴びる どんなに洗い流そうとも、あの嫌な感触は……すぐには消えてくれそうにない ……また、記憶の上塗りをして 奥深くに、沈めよう……

ともだちにシェアしよう!