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……好き? アオが、僕を……? 思い返す顔は、いつも威嚇したような表情で…… 思い返す言葉は、いつも攻撃的で…… そんな事、思ったこともなかった 『好きだから、じゃねぇのかな?』 慰めるためだけに発せられた、軽い言葉なんかじゃない その声は、言葉は……僕の見えない側面を、押し付ける事なく諭し、僕の心にそっと寄り添ってくれた それから会話が途切れ、気付けば店の灯りが増え、すれ違う人達が増える 駅前通りまで歩けば、駅裏の妖しい色は殆ど消えた ショッピングモール前にたむろするのは、昼間には見たこともない派手で露出度の高い男女 その前を、くたびれたスーツを着たサラリーマン達が通り過ぎる 「……じゃあ、気をつけろよ」 改札前まで来てくれた彼が、片手を軽く上げる その手には、キティの絆創膏 ここに来るまで、一度も触れることはなかった…… 「……は、はい」 僕を助けてくれた時、力強く握ってくれたその手に…… ……もう一度、触れて……彼を感じてみたかった…… 胸の高さまで片手を上げ、小さく振る 「………」 彼に背を向けたくない もう少し……時間が少しだけ巻き戻って 彼の傍に、もう少し、いられたら…… ペコリ、と頭を軽く下げ、もう一度彼を見上げる するとその手がスッと伸び、僕の頭に軽く触れた 「………」 それだけ……たったそれだけ ……だけど、言葉にならない色んな感情が胸の中に渦巻いて…… 僕の血潮となって体中を駆け巡る 「……あ、悪ぃ、つい……」 その手がすぐに引っ込められてしまう 触れていたのは……ほんの二秒…… ……だけど……嬉しい…… ドクドクと心臓が激しく脈打ち 頬がどんどん熱くなる 「……あの」 また会って、くれますか……? 彼をチラリと見上げ そう、口にしようとした時だった…… ″まもなく、一番線に、上り列車が参ります″ 駅アナウンスが流れ、その言葉を遮る 「早く行けよ」 彼の口角が綺麗に上がる 「……は、はい」 先程の声は、彼に届いていなかったのだろうか…… 後ろ髪を引かれる思いのまま、改札をくぐる そしてすぐに振り返れば、変わらない表情を浮かべた彼が、こちらを見ていた キティの絆創膏 その手が、ハーフパンツのポケットに仕舞われる ざわざわ…… ホームが騒がしくなり、電車が到着した事がうかがえる それにしても騒がしすぎる…… まるで芸能人が出現したかのように、女性の黄色い声が駅構内に響き渡っている

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