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true heart-1
-6-
「先にシャワー浴びておいで」
アパートの玄関ドアを開けるなり、茶々丸がそう言って僕の背中に手を添えた
「……え、でも僕……」
さっきシャワー浴びて……
そう言いかけ、ハッとして口を噤む
……そんな事言ったら、何があったか問い詰められちゃいそう……
「……ん?」
「ううん、何でもない……」
爽やかな笑顔を向ける茶々丸に、慌てて取り繕った笑顔でひた隠す
怪しまれないように二度目となるシャワーを浴びようと、バスルームに足を踏み入れる
「………」
シャワーヘッドを掴み、蛇口をひねる
勢いよく出たお湯が足元へと伝い、排水口へ吸い込まれる様に流れる
湯気が立ち、湿度の高くなった空気を吸い込みながら、先程の事を思い出していた……
……帰りの電車内
茶々丸はただ静かに、シートに座っていた
しかし、イケメンで、スタイルも抜群の茶々丸から放つオーラがキラキラすぎて、乗り合わせた女性達から熱い視線が注がれる
茶々丸はそんなの全然気にしていないみたいだけど……
……でも、肩が触れる程密接して座る僕の方が、何だか恥ずかしくて……
「……そ、そういえばこれ、茶々丸持ってたっけ?」
茶々丸の腰に巻かれたチェックシャツにそっと触れる
「……ああ、これはアオのだ」
「え……」
さりげなく尋ねれば、サラリと意外な人物の名前が耳に入る
驚きを隠せないまま茶々丸を見上げた
そしてふと思い出す、アオの姿……
……そうだ……これ、アオがよく身に付けてたシャツだ……
「まだ外出できない体なのに、小太郎を探すと言って訊かないものだから………これを代わりに連れていくと言って、アオを説得したんだよ」
「………」
……どうして……
僕なんか、アオにとってどうでもいい存在なのに……
目障りで、近寄りたくもないくらい、僕の事………
『好きだから、じゃねぇのかな?』
不意に、防水工の彼が言った言葉を思い出す
……ズクンッ……
胸の奥が、じわじわと熱く……だけど、押し潰されたように苦しくなっていく……
握った手を胸に当て、顔を伏せる
瞬間……
思い返される、重ねた唇の感触
甘えるように光を揺らし、僕を覗き込んだアオの青い瞳
熱く濡れた舌、湿った肌の感触
微かに感じた高貴な淫香
熱く漏れた吐息
「アオはすぐ小太郎に牙を剥くようだけど、それが本心だと思わないでやって欲しい」
茶々丸が静かに僕の顔を覗き込む
その口調は優しく、僕の心にスッと入り込む
「誤解を受けやすいけど、心根は優しい子なんだよ」
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