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「……小さい頃……僕の両親が離婚して、母に引き取られたんだけど……僕は母の人生には邪魔で……捨てられて……」
僕が梨華ちゃんに振られたあの日
雨が降りしきる中
濡れた段ボール箱の中で鳴いていた四匹の捨て猫を、偶然見つけた……
「そういう辛さは、解ってるつもりだったのに……あんな風に言ってしまって……」
あの時、本当は引き取りたいと思ってた
「……えっと、上手く言えないけど……
ここを追い出されないように、バイト増やしたりして……僕が何とかするから……」
玄関前で倒れているアオを見て、家に引き入れた時から……
僕は、覚悟したつもりだった
「……だから、」
「小太郎」
僕の言葉を茶々丸が遮る
驚いて顔を上げれば、真面目な瞳をした茶々丸と目が合った
その瞬間、すぐに目元を緩ませた茶々丸が、優しい口調で続ける
「実は今日、ミルクと一緒に撮影の仕事をしてきたんだよ」
「……え……」
驚いた僕は、茶々丸とミルクの顔を交互に見た
「昨日、『necoco.』のモデルにスカウトされてね……」
『necoco.』とは、お店のクーポンをメインに、デートスポットやファッションなどの情報も載せた、毎週発行の地域限定フリーペーパーだ
ショッピングモールは勿論、駅前や商店街、コンビニの一角にも置かれ、地元では多分知らない人はいない
ミルクが昨日、お風呂で言ってたモデルのスカウトって……ちゃんとしたものだったんだ……
″だから、電車とご飯代、頂戴?″
……もしかして、ミルクがねだったのって、このためだったの……?
「モデル料は大した事ないかもしれないが、無いよりはマシだろう」
正面に座る茶々丸が、爽やかな笑顔を僕に向ける
「……ボクも茶々丸もね、撮影で使った服とか小物とかアクセサリーとか、いっぱい貰ったんだよっ!」
僕の左斜向かいに座るミルクが、屈託のない笑顔を僕に寄越す
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