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人通りのある道の上……往来する人の通行の邪魔にならない様にと端に寄り、改めてスマホの画面を覗く。
そして健太郎の名前をタップすれば、幾つかのメッセージが目に飛び込んだ。
未読のメッセージは、全部で六件。
……あれ、これだけ?
もっと沢山来ていたと思っていたけど……
《キナコの事は、誤解だって!》
《小太郎と会って、ちゃんと話がしたい》
《二人で》
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《見たらちゃんと返せよ》
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《無視すんなよ》
《既読くらいは、つけろよな》
日を跨いで送られたメッセージ。
胸がズキンと痛む。
既読の付かないメッセージを確認する度、健太郎はどんな気持ちだったんだろう……
そう思ったら……罪悪感がじわじわと胸の中に広がっていく……
〈ごめん〉
そう打って、送信に指をかけ……ようとして、止める。
鎖骨の下にあった痕は、もう消えてしまった。けど……
……まだ、あの時触れた記憶や感情は残ってしまっている。
もし返事をして会う事になったとしたら、健太郎のペースにズルズルと流されて……気持ちまで引っ張られてしまいそうで……
打った文字を削除し、スマホをポケットにしまった。
「ねぇ、コタロー!」
リビングで寛ぐ僕の背後から、ミルクの猫なで声がした。と同時に、視界の左右から、細くて白い腕が現れる。
「……ゎ、わぁっ!」
柔らかく、ミルクの温もりに包まれた後、ふわっと、甘っとろい匂いに纏われる。僕の背中にミルクの平たい胸がトンッと当たり、その熱がじんわりと伝わってくる。
「今日ね、ミルクと茶々丸が、これに載ったんだよっ!」
ミルクの唇が首元に近付けば、シルクの様に柔く滑らかな吐息がかかる。それが擽ったくて思わず首を竦めた。
ミルクが広げて見せたフリーペーパーを覗いてみる。
〖§今週の ミルクコーデ♡〗
可愛らしい文体の下には、全身コーディネートをしたミルクの写真。
その周りには、使用されてる服や小物、そして販売店や価格等の詳細が掲載されていた。
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