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寂しげに……少し首を傾ければ、ミルクの白い髪がサラリと揺れる。
……花火……今まで一度も見たことがないなんて……
「……見に行こう」
「ほんと?!」
「うん、みんなで………って、わぁ!」
パッ、と明るい表情に変わったミルクがぴょんっ、と僕に飛びかかる。
と、バランスを崩した僕は、そのままこてんと後ろへ倒れてしまった。僕の両肩を上から押さえつけ腰に跨がったミルクは、満面の笑みを浮かべて僕の顔を見下ろした。
「コタロー、大好き!」
「……わぁぁっ、!」
そのままミルクの可愛らしい顔が近付けば、サラサラと肩から髪が溢れ落ち、僕の頬を擽る。
と、サクランボ色した唇が割れ、ちらりと顔を出した舌が迫り………
……ざらっ
「……オイ、貴様!」
「こらこら……」
チッ、とアオの舌打ちと共に、茶々丸の緩い溜め息混じりの声が聞こえた。
ブブブ……
スマホが震える。
画面を見れば、健太郎から。
《話あんだけど、いいか?》
その言葉に、胸がドキンと高鳴ってしまう……
既読がついたから……来たんだろうけど……
「………!」
《明日、バイト終わったら会おうぜ》
読んでる最中にスマホが震え、続けてメッセージが表示される。
《既読ついてんだから、見てるんだろ?》
《返事よこさなかったら、バイト先行くからな》
「………」
どうしよう……返した方が、いいよね……
光る画面を覗き込み、返信文を打つ。
〈話って?〉
送信する。
《それは、会ってから》
〈……え。それ、電話とかLINEじゃダメ……?〉
《この前家に来た時、課題ノート忘れてったろ》
……そういえば、そうだった……
あの日、健太郎の家で……あんな事があって……
あのまま、逃げ帰っちゃって……色々あって、すっかり忘れてた……
《それも渡したいしさ》
〈……うん〉
《じゃ、モールで待ち合わせな》
〈わかった〉
《誰にも内緒で、一人で来いよ?》
……え……
内緒って……なんで……
健太郎……どういうつもりなんだろう……
無意識に首元に触れる。
……でも、モール内なら……人も多いし……
大丈夫……
〈……うん、わかった〉
「………」
そう送ったものの、やっぱり茶々丸達に何も言わないのが後ろめたくて
何だか落ち着かなかった。
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