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「茶々丸は、ボクの撮影を待ってる間に、女性スタッフ全員を虜にしちゃったんだよねぇ……」
「………彼女達の悩みを聞いていたんだよ。何処か落ち込んでいた様に見えたからね」
流し目をし、どことなくミルクが引っ掛かる様な言い方をする。しかしそれをものともせず、目を細め、少し肉厚でセクシーな唇が綺麗な弧を描いた。
〔茶々丸王子さまにお願いしたい事を大、大募集します!コーナー初の今回は、スタッフの恋愛相談をして頂きました!〕
……凄い……
フリーペーパーに再び目を落とせば、茶々丸のプロフィールとは別に、対談に参加した女性スタッフ三人の、簡単なプロフィールと相談内容が書かれていた。
……なんか、茶々丸らしいというか………
でも、わかる気がする……
なんていうか……茶々丸には、何でも包み込んでくれる優しさがあるというか……
「……あっ、」
突然ミルクが声を上げ、フリーペーパーをペラペラと捲る。
そして開いたページには、夜空に美しく彩る花火の写真があった。
「ミルクね、これ見たいんだぁ………」
耳元で甘く響く、ミルクの猫なで声。熱い吐息。
甘い香りが少し強くなり、胸の奥がキュぅン、として力が抜けそうになってしまう……
「ねぇ、コタロー。ミルクを花火大会に連れてって!」
「……ミルクに発情期が来なければ……ね、小太郎?」
さっきのお返しなのか、表情を崩さず茶々丸が意味ありげに言い放つ。
「あーん!……もう、それコタローの前で言っちゃう?」
「ん……?」
恨めしそうに……でも可愛らしく甘ったるい声を上げたミルクに、茶々丸が爽やかな笑顔のまま飄々と答える。
それに慌てた様に、ミルクが僕の肩越しから顔を覗き込んだ。
「ミルク……別にコタローを襲おうとか思って言った訳じゃないからねっ!」
「……え」
お、襲う……?
驚いてミルクを間近に見れば、キラキラと潤み輝く大きな瞳に吸い込まれそうになった。
「完全に、襲う気だろう」
気付けば茶々丸の背後でアオが腕組みをして立っていた。
その瞳が吊り上がり、ギラギラと光っている。
いつもならアオに噛み付くミルク。
……だけど……
「……ミルクね、……この発情期のせいで、毎年ちゃんと花火を見たことなくてぇ……」
そう言いながら、ミルクがゆっくりと僕から離れていく。
驚いて振り返れば、寂しげに瞳を揺らし、しおらしく床にぺたんと座っていた。
「だから……今年はコタローと一緒に、見てみたいなぁって……」
……ミルク……
俯いていたミルクが、ちらりと目線を上げる。
「……だめ?」
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