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meet again2-1
「………だと思ったよ」
口角を上げ、僕に歯を見せて笑う健太郎が手を離す。
「………」
その余りにアッサリと解放された事に、多少の戸惑いが残った。
「……えっ!ちょっと待って!……あれってLEONじゃないっ!?」
近くを通った女性二人組がきゃあと黄色い声を上げる。
それに反応して振り返れば、捌けだした人垣の間から派手な格好をした人が見える。
透き通る程綺麗な金色と可愛らしいピンク色のツートーンボブヘア。
猫耳付きのフードを頭に被り、左の胸元にジッパーやチェーンのついたゴシック系の黒いパーカーを羽織っている。
ファスナーを首元までキッチリと閉め、その二の腕辺りにはベルト、裾には大きめのピンが幾つか装飾されていた。
そのパーカーと同じ様に、ジッパーやチェーンが施された細身のボトム。その足元は、ゴツい厚底の黒靴。
しゃがみ込んでギターケースの蓋を閉める彼女の元に、先程の女性二人組が小走りに近づいた。
何やら談笑するその横で、片付けをしている男性が二人。
「……!」
彼、だ……
「えぇっ!終わっちゃったんですかっ?!」
「うん、ゴメンね!折角来てくれたのに」
「……いえっ!そんなそんな!」
彼女達にLEONと呼ばれたその女性が立ち上がる。
「明日もここでやるからさ、良かったら来てよ!」
ポケットに手を突っ込みLEONがそう言えば、彼女達はキャア!と飛び跳ねて騒ぐ。
そんな彼女達に彼が近付き、何やら話し込んでいた。
よくよく見れば、防水工の彼もスカル柄の黒いシャツに、シルバーアクセサリーをしている。
……バンド……してる人、だったんだ……
最初の職人のイメージとは違う、もう一方の側面を持つ彼の姿に放心する。
「………」
余りにかけ離れた存在の人に感じ、足が竦んでしまった。
さっきまでの、追い掛けた勇気が……今はもう残っていない……
「……どうしたんだよ」
その時軽く、バンッと背中を叩かれる。
ハッとして振り返って見れば、健太郎が僕に微笑んでいた。
「早く行ってこいって!」
そして今度は強めに背中をトンッ、と押され前に蹌踉ける。
「………」
……健太郎……
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