10 / 49
Ⅲ いま、吹き荒れる嵐!①
ピンポーン♪
玄関のチャイムが鳴っている。
まさかー★
帰ってきてしまったー!!
「俺、出るよ」
インターホンで返事して、表に出たら上手い事言って、外でもう少し時間を潰してもらおう。
お兄様と鉢合わせたら大変だ。
ピンポーン♪
「はいはーい」
ムニュウ
俺が掴まれたのは、手……ではなく~
あの場所
お口の中で、舌が突っつく。
ハムハムして、タマ、コリコリひないでぇー
「朝っぱらから……どうせ新聞の勧誘かなんかだろう。出る必要ないよ」
うっ、さすがは兄弟。
考える事が同じだ。
「で、でも。大事な用かも知れないし……郵便屋さんかなぁ?」
「書留でも届く予定あるの」
「大事な書類……」
「……は、なくすといけないから、全部私の手元に届く手筈になってるけど?」
そうだったー★
全部、お兄様チェックが入るんだーっ
「こないだ通販で……」
「無駄遣いしたの?」
「してません」
ピーンポーン♪
わーっ、早くしないと合鍵で入ってきちゃうよーっ
「あ、警察かもっ」
「お前が、警察にお世話になる事はないだろう。私が出て話をつけてくる」
ヒィー。信頼されてるのは嬉しいけど、お兄様が出ちゃ困るーッ
「……あ、回覧板かも」
「……今時、アパートにも回覧板がまわってくるのかい?」
いぶかしげな面持ちを見せながらも、お兄様の囲うベッド中から脱出に成功した。
「はーい。いま出まーす」
インターホンの通話を押した……瞬間
『まだ寝てるのかなぁ。買い込みすぎて手が塞がってるから、ドア開けてほしいのに』
『仕方ない。合鍵で入ろ』
ヒィィィィ~~!!
玄関先の会話が丸聞こえだァァァーッ!!
「………ねぇ、郁巳」
ヒッ!
背筋が凍った。
「どうして、お隣さんが合鍵持っているのかな?」
ヒィィィィー!
振り返りたくない。
視線がジリジリ痛い。
絶対零度の眼差しが、背後から心臓を突き刺している。
「お兄様、お隣さんとお話がしたいなぁ」
ともだちにシェアしよう!