21 / 49
Ⅳ 風呂はジェットコースター③
顔をぶつけないよう、器用にかわしながら、二人が二本の舌で口内を犯す。
内壁を撫でて、舌を絡めて、交互に突っついて、また戻って、上顎と下顎を舐める。
フゥぅ、フゥぅ
息が繋げない。
飲み込めない唾液が溢れても、舌は動きを止めない。歯列の裏側にも、舌の根元にも絡みついてくる。
フゥぅン、フゥぅうー
頭の芯が、ぼぅーとする。
口の中に三つ舌があるなんて……
二つの舌は俺の意思とは関係なく、口内をグルグル巡り巡って、唾液をかき混ぜてくる。
頬の内側をつつき、歯の裏側舐めて、思わず引っ込めた俺の舌を追ってくる。
フワアァアー
ようやく舌と、舌と、舌が離れた時には、口の周りがベトベトで唾液まみれになっていた。
「イク、頬っぺた真っ赤」
つんつん……チュッ
指でつついた頬を、ヘンゼルが唇で啄(ついば)む。
「耳も真っ赤だよ」
ハムハム……チュッ
耳朶の触感をもちもち確認した唇が食 んで、キスを落とした。
「イクさぁ……」
「イクミさぁ……」
湯煙の中で、碧眼と灰銀の眼が悪戯っぽく揺れている。
「口の中に、なに挿れられると思ったのかなー?」
「なんだと思ったのかなー?」
ナァァーッ、それを聞くかァァッ
「教えてほしいな?」
「教えてくれるだろ?」
にこにこ♪
にまにま♪
確信犯の笑みだ。
そそ、そんなのっ。あの流れだと、アレだと思うじゃないか。
言えない!絶対、言えない!
「イク、可愛いなぁ」
「目元まで赤くなってる」
チュウゥーっ
耳の裏の首筋に、右と左、唇と唇が舞い降りた。
小さく噛まれて、痕をつけられた。
プッ
二人が一緒に吹き出した。
「やっぱり、俺をからかったのかー!」
アハハハハー
バスルームに笑い声が反響する。
「俺達はイクの嫌がる事はしないぞ」
「イクミが大好きだからな」
うー。それを言われると、文句言えなくなるじゃないかァー
「もしかしてイク、怒ってる?」
「まだ顔が赤いし……」
碧眼と灰銀の眼が、俺の顔をまじまじとのぞき込む。
瞳の水底を、不安で揺らして……
………嫌じゃなかった。
舌二本、同時に挿れられても~
「顔が赤いのは……」
二人の視線から逃れるようにして、うつむいた。顔が熱いから俺、まだ真っ赤なゆでダコさんだ。
「……ちょっとビックリしただけだから」
あーもうっ
なにやってんだよ、俺~
「イク、可愛いー♪」
「イクミ、可愛いー♪」
「わわわっ」
引っくり返らなかったのは、ヘンゼルとグレーテルに左右両側から、ぎゅうーっと一緒に抱きつかれたからだ。
「今度は俺達の……」
ウギャ♠
抱きしめて腰振るな、ヘンゼル!
ナニをブルンブルンして、主張するな!
「一本ずつ、お口に挿れてあげるからなーっ」
グレーテルぅぅーっ
お前もかァァァーッ!
脚の付け根の太い幹を、俺にすりすりするんじゃないーッ!
ともだちにシェアしよう!