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Ⅳ 風呂はジェットコースター⑤
床でヘンゼルが身悶えている。
俺を落とさないようにしながら、グレーテルが背中を滴る水の冷たさに耐えて身震いしている。
お兄様が二人に掛けた『掛け湯』は、冷水だ。
「私も、掛け湯をしなければいけないね。湯加減をみてくれるかい?」
途端、シャワーヘッドから大量に噴き出した水が、ヘンゼルを直撃した。
「ヒギャーッ!」
床のヘンゼルが飛び跳ねる。
「おっと、失礼。冷たかったかな?」
ガシャンっ
踵 がお風呂の椅子を突き飛ばして、ベタンッ
グレーテルが派手に尻餅をついた。
うわー、痛そう~
……お尻、青アザになったな。
俺は……痛くない。
お兄様に脇を抱きかかえられている。
「ギギャーッ!」
床に転んだところを、シャワーの冷水が襲う。
一極集中のゲリラ豪雨に、悲鳴を上げたグレーテルが飛び退いた。
「すまない。温度調整は、ここでするんだったよ」
ようやく温水になったシャワーで、お風呂の椅子を流して、お兄様が腰かけた。
俺は、お兄様の膝の上。
「郁巳。少し顔色がよくないね。水が当たってしまったか」
熱いシャワーが肩から流れ落ちた。
床で、冷水に打たれたヘンゼルとグレーテルが、仰向けすっぽんぽんで凍結している……
お兄様……容赦ない。
「私のせいだね。暖めてあげるよ」
背後から、逞しい腕に抱きすくめられて。
俺は、お兄様の胸の中。
………って!
固い★
お兄様の固いのが、リアルに当たってるーッ
「『浴場』だけに『欲情』してしまったよ」
やかましいわっ、お兄様!
それさっき、俺が心の中で言った。
………兄弟だな♠
お兄様っ、せめて。
「タオル巻いてっ」
「そうだったね、それが、お風呂のマナーだ。お前に教えられたよ」
良かった。
生で当たるのは回避だ。
ビリリビリィー
なぜっ?
お兄様、タオルを破った?
しかもお兄様の破ったタオル、俺のー!
「タオルを巻くよ」
お兄様の手が伸びる。
タオルだった布切れが巻かれたのは……
俺のー!!
…………………………膨らんだアソコだ。
「お風呂のマナーだよ」
さっきまでタオルだった布切れを根元に巻かれて、膨張していきり立つ雄しべを、ねっとり……
宵闇色の視線が舐める。
ちがーう!
そのマナーは間違ってるっ!
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