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Ⅴ この手をずっと握ろう④

「美味しいな」 「良かった。お兄様に喜んでもらえて」 「お前が私の好物を覚えてくれていた事も嬉しいし、このクレープもほんとうに美味しいよ」 ところで……と。 クレープを食す口を止めた。 「口をつけてしまったが、チョコの増量は頼めるだろうか?」 「増量してもらってくるから、クレープ……」 一旦、預かろうとしたけれど。 「お前のチョコが欲しいんだ」 エプロンの下に滑り込んだ手が、シャツのボタンを器用に外して……クニンっ 指が胸の実を、プチュリと潰した。 「よく熟れたチョコレートだ」 「ア、ヒャうっ……お兄様ぁ」 「ミルクチョコレート色だね」 クニクニン 指先がエプロンの中の突起に悪戯する。 「お前のチョコレート乳首、いただくよ」 「ヒアゥっ」 声を上げて、パッと口を手で押さえた。 エプロンをずらして、お兄様の唇が左の乳首に吸いついている。 こんなところを誰かに見られたらっ 「誰も気づかないよ」 「でもっ……アゥん」 「ここは木の死角になっている。お前さえ、声を上げなければ……」 まさか、お兄様。最初から、そのつもりでベンチに座っていた? 「……余裕だね」 「ヒっ」 考え事をした俺を咎める舌が、チョコレート色の乳首を丹念に舐めてこねる。 「集中するんだよ」 「ハヒっ」 返事もできない。 ハァハアハァハァ 声を我慢しようとするけれど、ともすれば甘美な喘ぎが漏れそうだ。 ハァハァハアハァ チュプ、チャプ、ヌプヌプ、チュプウぅーッ まるで嬌声を漏らさせようとするかの動きで、乳輪を舐めた舌が、乳頭に吸いついてくる。 ハアァアー 「……時にお前は日焼け止めを塗っているかい?」 「ハァハァハアっ……塗ってま…せん、ハゥアっ」 「紫外線は衣服を透過する。お前の乳首が、焦がしチョコ乳首になってしまうね」 「そんなぁ……フヒっ」 舌が胸をまさぐる。 「そうならないように、私がお前に日焼け止めを塗ってあげようね」 クレープのホイップを指で、すくいとって…… アフゥ 乳首を撫でた指からくっついたチョコバナナの生クリームを、指の腹と爪の先とで、何度も何度も塗り込められる。 けれども、すぐに体温でクリームは緩んで、垂れてしまう。 「溶けてしまったね」 とろん、と垂れた生クリームを赤いしたがチロチロすくって、ねっとり舐め取る。 そんな事したら…… 体が熱い。 内側から、鼓動が跳ねて高鳴る。 ドクドク……… 欲望が脈を打つ…… 「おに…い、さ…まっ」 いけないっ。甘い声が漏れてしまう。 指を噛んで押し留めるが、お兄様に手を握られて口から外されてしまう。 「体を傷つけるのは、許さない。お前は私のものなのだよ」 宵闇の淵で火が揺れて、肉食獣の欲を潜めた双眼が胸の実に帰る。 「アヒンっ」 ほとんど溶けてしまった乳首のホイップを、唇の先でピチュピチュ啄む。 限界だ。 俺……もう、我慢できない。 ポツン ポツン、ポツン のけ反った視界に映ったのは、灰を敷き詰めて重くのし掛かる空だった。 冷たい滴が額に落ちた。 ポツン、ポツン、ポツン…… シャアァァァァァー 暗い雲から、大粒の雨垂れが降ってくる。 「無粋な雨だね……」 暖かい体温が俺を包んでいる。 全身で覆い被さって、俺を守るように…… 大粒の雨を背中で受けていた。

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