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Ⅷ ヒミツのお兄様④
ごろーん
フカフカのリクライニングに横になる。
天草で一番どころか、熊本県で一番
九州でも五本の指にはいる天文台
龍ヶ岳山頂 天体観測所内のプラネタリウムだ。
俺の隣
左のシートにはグレーテルが寝ている。
後ろのシートにはヘンゼルが……寝ずに。周りの人の邪魔にならないように、膝をついた姿勢で、俺のシートにもたれて、俺の髪の毛をいじっている。
天草に帰郷したのも、今日のこのイベントを見るためだ。
「……なぁ。ミコトさん、なんか聞いてる?」
「遅いよなぁ」
バッタリ、崎津教会で鉢合わせたのに。
俺の右隣のシートが空席のままで、二人が心配そうだ。
満員の館内の照明が暗くなっていく。
イベントの開始だ。
主賓の方々の挨拶に始まり……
「おいっ」
バチンッ
あくびしたヘンゼルの頭を、思いっきりグレーテルがひっぱたいた。
「お前っ、聞いてるかっ」
「なにを~?」
「ミコトさんだ!」
「えェェッ!」
……『大切な人との思い出。大切な人との時間。離れていても繋がっています。
想いは、未来に』
盛大な拍手が起こった。
「ミコトさんの仕事って……」
「プラネタリウムをプロデュースする仕事なんだ」
プラネタリウムの天球に映し出される星をアートに変えるお兄様は、実はその世界では国際的に名の知れた有名人なんだ♪
「……お前が来ていると思うと、緊張したよ」
嘘つき
お兄様の挨拶、とても堂々としていた。
右のシートに寝転んだお兄様を睨むけれど。暗いから、さすがのお兄様でも分からない……だろうと思ったのに。
「覚えておくがいいよ」
えっ、どういう事?
聞き返す時間はなく、第一部・通常プログラムの学芸員解説による星空の投影が始まった。
第二部
ここからだ。お兄様プロデュースの星空は………
「ウワアァァァアアーッ!!」
絶叫した。
こんなの、聞いてないッ
だって、だって、だってー
「第二部は声出しOKだから、存分に叫ぶがいいよ」
地球外生物が襲ってくるんだァァァーッ!!
「夏休みだからね。趣向を変えて、3Dとプロジェクション マッピングを駆使したホラーに仕上げたよ。
普段、静かな場所で思いっきり声を上げるのも、面白いよ」
面白くないーッ
怖いの苦手なんだーッ
「……それとも、お前はこっちで声を上げる方が好きかな?」
お兄様がいない。
隣のシートにいる筈のお兄様が……
「ヒャウっ」
変な声を上げてしまった。
ジッパーを下ろされて取り出された昂りが、生暖かい湿った感触に包まれた。
足元にお兄様が跪いている。
俺を食べたの、お兄様のお口だーッ!!
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