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長谷 潤一の苦悩の日々④

入学式が終わり、授業も始まった。 部屋で会わなくても、教室では毎日姿を見られる。 でも殆ど毎日のように佐々木のことをオカズにしてしまっている身としては、目が合うと気まずいことこの上ない。 だから俺は逆方向の教室のドアを見つめるようになっていた。 気がついた事がある。 毎日のようにこの教室を覗きに来る奴らがいた。 噂に疎い自分でも、今年の新入生は可愛い子がいて、それはA組に揃っている。と言われている事は知っている。 まず間違いなく、河上、本島、佐々木の3人のことだろう。 自分のことを棚にあげるつもりはないが、護りたいと思った。 この学校ではネクタイの色で学年が分かるようになっていた。 1年生が水色、2年生が緑、3年生が赤となっている。 単なる野次馬もたくさんいるが、欲望を孕んだ目をした輩もいた。そいつらは緑のネクタイをしている。 つまりは先輩だ。 でもそんな事は関係ない。 3人に危害が及ぶ前になんとかしないと、と思うがどう対処すれば良いのかが分からない。 ま、行き当たりばったりでいいか。 今日も覗きに来ている3人組に俺は話しかけてみた。 「このクラスに何か用ですか?」 話しかけられると思っていなかったのか、誰も反応を示さない。 「誰かに用があるなら伝えますけど」 「あの可愛い子達と話がしたいんだ」 「呼んできてくれよ」 「本当に可愛い」 欲望がダダ漏れで、気分が悪くなる。 「あの子達はあんたらと話したくないと思う」 気が付いたらそう返していた。 「何だと?」 「本人達に聞かないと分からないだろ?」 「そうだ、そうだ」 3人でいないと何も出来なそうな人達だ。 「聞かなくても分かります」 強行突破をはかろうと3人同時に突進してくるが、ラグビー部で鍛え何人ものタックルを同時に受けるような特訓を重ねている俺には蚊が止まった位にしか感じない。 びくともしない俺を見上げたところで予鈴が鳴った。 「覚えてろよ!」 3人は声を揃えてそう言うと自分達の教室に戻って行った。 それから何度も色んな人達を追い払った。 それには2年生、3年生も混ざっていたが関係ない。 俺の好きな佐々木に指1本触れさせてなるものか! ん? 好き? 友達として…な訳ないな。 佐々木を誰にも渡したくない。そう思っている事は確かだ。 河上や本島と笑顔で話している佐々木を見る。 あの笑顔を自分に向けて欲しい。それは毎日のように思っている。 佐々木のことを考えると胸が騒ぐ。 それは初めて会った時からずっとだ。 この感情に名前をつけると“好き”ということなのだろうか? 今まで人を好きになったことが無い自分には、自分の気持ちが分からなかった。

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