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長谷 潤一の苦悩の日々⑥
夕飯が終わってから自主練までの時間は部屋で過ごすようになって1週間が過ぎた。
特に何を話そうと思う訳でも無いのだが、敦が楽しそうにしているのを見るのが楽しみになっていた。
ある時、敦がこんな話をしてきた。
「オレ、今までにいろんな人と付き合ってきたんだ」
女にも男にもモテそうな敦のことだ。
そうなんじゃないかなとは思っていた。
でも、本人から聞くと結構落ち込む。
「そう、か」
相槌を打つ声も小さくなる。
「でも、いつも流されてるだけで、本気になった人はいなかったんだよね。最近誠が好きな人の為に色々と頑張ってる姿を見て、今までの自分が恥ずかしくなっちゃった」
ダメだねと敦は苦笑する。
「これから本気になれる相手を見つければいいだけのことじゃないのか?」
それが自分ならいいと思うが、あり得ない。単なる願望でしかない。
「そうかな?」
「あぁ」
途端に笑顔になる敦を見ていると、好きな人が出来たようにしか感じられない。
実は“本気になれる相手”はもう見つかっているのかもしれない。
告白をしようかと考えていたが、言わない方が良いかもしれないと思ってきた。
でも、一度決めた事を違える事は出来ない性分である。
敦がその相手に告白をする前に気持ちを伝えようと、決意を新たにする。
もうすぐ初めての小テストがある。
敦はそれに向けて頑張っている。そこに水を差す訳にはいかない。
テストが終わったら気持ちを伝える。俺はそう決めた。
いつもこれといって試験勉強はしない。
勉強は授業中だけ。
朝も放課後も部活の為の時間である。
今回も試験勉強はせずに試験に臨んだ。
自分の感触ではまぁ出来た方だと思う。
試験結果が貼り出されて見に行く。
そう言えば、本島は入試で1位だったって敦が言ってたな、と思い出す。
結果表の1位は本島だった。10位に敦の名前も見つける。
凄いな。
俺は入試は57位だったから、その辺りか? と探しに行くが見つからない。
かなり悪かったのかと思い、どんどん下位の方を見て行くが、やはり自分の名前が見つからない。
「潤一? ここに名前あるけど。誠程じゃないけど、潤一もかなり順位上がってるな」
敦がいるのは結構前の方である。
見てみると17位だった。
「え? 満点?」
そこまで出来ているとは思っていなかった。
「静とオレも満点だった。誠は1問間違いね。あいつは静のお陰でどんどん成長してるんだ。抜かれないように気を付けないと」
敦はそう言うと、河上が居る所に行ってしまった。
少しでも順位が上がっていたらいいなとは思っていたが、まさか満点を取っているとは。
これで敦に気持ちを伝える覚悟が決まった。
考えたくはないが、振られたらまた顔を合わせないように生活すれば良いと思っていた。
仲良くなってからだから更に辛いが仕方がない。
敦の笑顔を脳裏に焼き付けるように、俺は河上と話している敦を見つめた。
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