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第1話
声が聞こえた方に目をやると、教室の前の扉に一人の男がもたれ掛かり、こちらを見て笑っていた。
気付けば教室中が静まり返っている。
「俺が嫌いってとこから聞いてたぜ。この俺様を辞めさせるってのは、なかなか面白いこと言うじゃねえか。ああ?」
うわバカだ。
失礼かも分からないが、俺の心の声はそう叫んだ。
地毛らしい派手な金髪に、蒼い瞳。
無駄が削ぎ落とされた輪郭は洗練された美しさを含んでいる。
鼻梁や形の良い唇などを見るに、異国の血が入っているのは間違いなかった。
すらりと伸びた手足に贅肉は全くついていないが、男を感じさせる逞しさを持っている。
が、なんか中身が残念だ。
自分を恥ずかしげもなく俺様なんて呼ぶ奴現実で初めて見た。
妹の持っているゲームにそんな生徒会長がいた覚えがあるが、俺は「こんなのリアルに居たらやべーな」と妹をからかった。
が、いたぞ。お前の好きそうなバ会長。現実に。
「俺様って誰だよ」
「はあ?」
事前に見せられた写真によってこの男が皇だということは分かっていたが“俺の存在は皆が知ってて当たり前”とでも言いたげな、初対面の人間に対する傲慢な態度が鼻についた。
この皇をどう処理するかはまだ決めかねているが、人の上に立とう立とうとするこいつをねじ伏せるのは必須事項だ。
出鼻を挫いてやると、皇は整った顔をわずかに歪めて怪訝そうに俺を睨む。
「だから、お前は何様のつもりだって訊いてんだよ」
これでキレたらぶちのめすつもりでいたが、なぜか皇はフフンと馬鹿にしたように笑って、言ってのけた。
「何様?俺様、生徒会長様だ」
うわ。
「ちょっ織田!いい加減にしろよ、殺されるぞっ…会長、すんません。こいつ今日この学校来たばっかでなんもわかってなくて」
皇のアホさに引いていると、前田が必死にフォローを入れてくる。何故こんな堂々と間抜けなことを言える環境が整っているのか。
前田に謝れと急かされてもそれを聞き入れないでいると、皇は笑みを浮かべたまま俺の顎を掬った。
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