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第2話

見上げてくる信の目が、まるで狩りを実行しようとする野生の獣のごとく、獰猛な光をたたえている。 本能で危機を察知した皇の背を、凄まじい寒気が駆け抜けていく。 「───────っ!!!」 反応が遅れた。頭を引き剥がす前に、皇自身に歯が立てられた。 噛みちぎられはしていない。血も出ていない。 しかし、怪我をしない程度ではあるものの、かなり強く噛まれた。 「悪いな。同じ男として同情するぜ」 目の前が真っ白になる。 こんなのは、おかしい。 こいつを退学させるのなんて苦でもないこの俺が、その張本人に牙を剥かれるなんて。 予想外の事態に動揺するばかりの皇の耳に、バキッと何かがはち切れるような音が聞こえた。 縛っていたはずの信の両手が、自分に向かって伸ばされてくる。 信を縛るネクタイが繊維ごと引きちぎられる音だったのだ。 「ネクタイなんかで俺の動きを封じたつもりだったのか?力のないお前好みのペットじゃねえんだからさ……」 「ぅぐっ、……っく」 痛さのあまり気持ち悪くなってきた下半身に全身で力をかけられ、これから何をされるのか見当がついたのも相まりさらに吐きそうになってきた。 信は椅子に皇を縫いつけるように手をつき覆い被さって、壁のように迫ってくる。 「やめろ!テメェッ……」 「うっせーよ、バ会長」 腹部に重い衝撃を感じた。 皇は、猛烈な吐き気に襲われつつ意識を失ったのだった。

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