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第2話
◇◇◇
「───っあ、うわっ!?」
目が覚めた皇を襲ったのは、憎い男の男性の象徴を、今まさに自らの体に突き入れられんとする非情な現実だった。
「ん?目ェ覚めたか。ちょうどいいな」
「ふっ、ふざけんなっ!!何してんだテメエッ!」
どれくらい気を失っていたのか定かではないが、椅子に腰かけていたはずの皇の体は、今はうつ伏せに床に転がされていた。首をひねって後ろを見ると、腹立たしい笑みを浮かべた信が見下ろしている。
「ローションやらゴムやら常備してある妙な生徒会室だったから、お前のケツ解すのも意外と上手くいったぜ。落ちてて筋肉も弛んでたしな」
その言葉で、皇は自分が今下半身になにも身に付けておらず、信に向かって尻だけを高くかかげるという屈辱的な格好をさせられていることに気がついた。
怒りと羞恥で全身が蒸気するのを感じる。目の奥でバチバチと火花が散った。
どうにかして逃れようとまず手を動かしたが、その手は後ろ手に、ガムテープで一まとめにされている。
腰から下は信に制御されていて、全く動かせなかった。
───逃げらんねえ。
耐え難い苦境に唇を噛み締めながら、皇は信を詰った。
「…このゲスが……強姦だぞ、こんなっ……俺は恥ずかしがって隠したりなんかしねえよ。告発もするし、お前を豚小屋にぶちこんでやる。終わったなァ、お前の人生」
だが、信は顔色ひとつ変えず、ニヤニヤと皇を見下ろしている。
カッとなった皇は張り裂けんばかりの声で怒鳴った。
「んっだよそのカオはぁぁあっ!!?テメーの人生終わったッつったんだよ、下品なツラ晒してんじゃねっ、がッ」
否、怒鳴ろうとした。正確には、その怒号は途中で信の物を口に押し込まれたことで、最後まで続けられることなく塞がれたのだった。
さっきの信と同じように──いや噛みきってやろうかと目を爛々と光らせていると、それを見透かしたように信が笑う。
「ほら、こっち向け。はいチーズ。……歯当てたらお前の家の会社と取引先に、この写真バラまくぜ」
目が眩むような閃光と、耳にまとわりつく煩わしいシャッター音を、皇は絶望的な心持ちで受けとめていた。 ポケットに仕込んでいたらしいスマホを持って見下ろしてくる信は、彼にとって悪魔にも見えた。
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